「おもてなし」は1日にしてならず、人手不足の壁 優秀フォーキャスターによる日本経済展望

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日本の主な需要項目のうち、もっとも期待ができるのは設備投資だろう。コロナ禍における働き方や人々のニーズの変化に対応するため、設備投資のニーズは強い。むろん、世界経済の見通し悪化などにより投資先送りのリスクは否定できない。だが、足元で積み上がっている「受注残高」がそのバッファーとなる。

「受注残高」は8月時点で約34兆円あり、それを直近3カ月間の平均販売額で割った「手持月数」は13.2カ月と高水準である。今後、受注額が落ち込んだ場合でも、設備投資の一致指標である販売(出荷)は底堅く推移することが見込まれる。

海外経済の回復を待つ「守り」の時間帯

各種オルタナティブデータによると、7~9月期はコロナ感染第7波の影響で個人消費は伸び悩んでいる。10~12月期は回復が期待できるが、インフレ高進による消費マインドの悪化が進んでおり、均してみれば緩やかな回復にとどまるだろう。世界経済の悪化によって財輸出は伸び悩んでおり、外需にも期待をかけにくい。

エネルギーなど資源高が円安による輸入インフレに切り替わる中、8月分のCPI(消費者物価指数)総合は前年同月比で3%に達した。政府はコストプッシュ型のインフレに対して財政政策で緩和する姿勢を鮮明にしている。日米金利差の拡大を食い止めることは困難であり、円安メリットを生かしつつ、最低限の対応を行うことは理にかなっている。

水際対策の緩和によるインバウンド需要を着実に積み上げながら、世界経済の改善を待つという「守り」の時間帯が続くことになるだろう。

末廣 徹 大和証券 チーフエコノミスト

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すえひろ とおる / Toru Suehiro

2009年にみずほ証券に入社し、債券ストラテジストや債券ディーラー、エコノミスト業務に従事。2020年12月に大和証券に移籍、エクイティ調査部所属。マクロ経済指標の計量分析や市場分析、将来予測に関する定量分析に強み。債券と株式の両方で分析経験。民間エコノミスト約40名が参画する経済予測「ESPフォーキャスト調査」で2019年度、2021年度の優秀フォーキャスターに選出。

2007年立教大学理学部卒業。2009年東京大学大学院理学系研究科物理学専攻修了(理学修士)。2014年一橋大学大学院国際企業戦略研究科金融戦略・経営財務コース修了(MBA)。2023年法政大学大学院経済学研究科経済学専攻博士後期課程修了(経済学博士)。

 

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