分析にあたり、チームは時間術の内容を3つの種類に分けました。
○構造化:「どの活動をどの時間に行うか?」をはっきりさせるタイプの時間術を意味します。スケジュール帳、リマインダー、To Doリストなどが代表例です。
○保護化:外部の障害やトラブルから時間を守ることに特化した時間術です。時間のかかる依頼を断ったり、早起きで仕事をしたり、仕事中にSNSへのアクセスを遮断したりといった手法があります。
○適応化:同僚の依頼や急な会議などの問題を事前に想定し、あらかじめ対策を立てておく時間術です。「急な会議が入ったら書類作りは来週に回す」「急な仕事を頼まれたら経費精算は同僚に頼む」のような行動プランを作る方法が一般的です。「予備日を作っておく」なども、この手法にふくまれます。
この分類にもとづき、すべての時間術の効果を分析したところ、結論は次のようなものでした。
○時間術と仕事のパフォーマンスには「r=0.25」の相関しかない
〝r〞は2つのデータにどれぐらい深い関わりがあるのかを表す数値で、ここでは時間術と仕事のパフォーマンスの関係を示します。数字が1に近いほど両者は関係があるとみなされ、このデータで使われた分析法では、0.5以上の値を取れば「大きな関係がある」と判断されるのが一般的です。
たとえば、ビールの販売量と気温の関係を調べると、たいていは「r=0.78」ぐらいの大きな数値が出ます。暑い日に冷たいビールを飲みたくなるのは当たり前ですが、それだけに効果量も高くなるわけです。
時間術がもっとも効果を発揮するのは「人生の満足度」
その点で、0.25という数値は微妙なラインで、「時間術でパフォーマンスが上がることはあるが、効果を実感できない場面が非常に多い」レベルだと考えられます。ここで言う仕事のパフォーマンスは、上司による業績評価、仕事へのモチベーション、作業へのコミットメントなどで測定しており、これらの指標に対して、時間術ははっきりした意味を持たないことになります。
さらにチームは、こんな結果も示しています。
○勉強のパフォーマンスに使うと時間術の効果はさらに低くなり、学校のテストの点数や成績アップは期待できない
○時間術がもっとも効果を発揮するのは「人生の満足度」で、仕事のパフォーマンスより72 %も影響度が大きい
時間術というと、大半の人は日々のタスクのパフォーマンスアップに使うでしょうが、実際にはさほどの効果を得られず、メンタル改善のメリットのほうが大きいわけです。
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