障がい者に優しい「下町の映画館」その驚きの挑戦 聞こえない・見えない人にどう作品を届けるか

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そもそも席数も20席と少ないから、一般のお客さまは障がい者の方に席を譲らなければいけないのかなと遠慮されてしまうことも多かった。最初は集客も本当に厳しかったし、赤字続きでどうしようかなというときもありました。だけど3年くらいたってようやくご近所の方とか常連さんにも認知されてきましたね。

映画館
劇場の内部(©️Chupki)

ガイドヘルプの派遣ができなくなった

――それまでコツコツと活動を続けてきたと。

ただ、ようやく浸透してきたかなというときにコロナ禍になってしまったんです。コロナ禍当初の3密が避けられていた頃には、シニア層や障がいを持っている方が外に出るのが怖いということになってしまって。しかも視覚障害者の方でガイドヘルプ(外出のサポート)が必要な人たちも、介助者の事業所自体が映画館への派遣をやめたことがあって。それは結構きつかったですね。

プロデューサー平塚千穂子(ひらつかちほこ):バリアフリー映画鑑賞推進団体CityLights/CINEMAChupkiTABATA代表。2001年にバリアフリー映画鑑賞推進団体CityLightsを設立。以後、視覚障害者の映画鑑賞環境づくりに従事。2016年日本初のユニバーサルシアターCINEMAChupkiTABATAを設立。その功績がたたえられ、第24回へレンケラー・サリバン賞を受賞。本作にも音声ガイド制作者として出演している(写真:筆者撮影)。

――今ではコロナ禍も少しずつ落ちついてきたと思いますが。

最初の頃はお客さまが戻ってこなかったらどうしようと思っていました。ただコロナ禍で困った反面、ミニシアターエイド(経営が逼迫している小規模映画館を支援することを目的としたプロジェクト)みたいなうねりもあって。ミニシアターの取材が増えたんですよね。その中でもチュプキは特徴のある映画館なので、逆にメディアに取り上げていただける機会が増えて。むしろこの映画館の存在を知っていただく機会になって。応援していただける方も増えてきましたね。

この間も7月からDCP映写機導入のためのクラウドファンディングを行ったんですけど、想像を超えるご支援をいただいて。目標だった600万円のストレッチゴールを達成して、最終的に940万円まで集まりました。この6年間でチュプキを本当に愛してくれるお客さまがこれだけたくさんいたんだなと。そして支援をしてくれるだけじゃなく、「大好きな映画館です」「絶対に残ってほしい」といった応援のメッセージもたくさんいただいて。本当に感謝ですね。

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