障がい者に優しい「下町の映画館」その驚きの挑戦 聞こえない・見えない人にどう作品を届けるか

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だから違いにフォーカスを当てるよりも、何がしたくてその表現を使うのか。そちらの通じる部分というか、みんなが大事にしてることに立ち戻っていくと、本質的なところでつながっていくんじゃないかなと思いましたね。それこそそれが"こころの通訳者"ということになるのかもしれないですが。

それを引き継いでいけば、人のこころもバトンのようにつないでいけるんじゃないかなと思います。

――今は価値観がバラバラだからこそぶつかりやすいし、だからこそぶつからないように距離をとることになり、人との関わりが希薄になりがちだと思いますが、だからこそお互いを理解することを諦めない粘り強さも必要だなと思いました。

最初はお互いわからないところから始まると思うんですよ。見えない人にとっては聞こえない人の世界って想像できないし、逆もそうだと思うんですけど。でもわからないからこそ、ちゃんと知ろうとする姿勢が大事だと思うんですよ。

どうしてもわたしたちは簡単に違うねと言えてしまうじゃないですか。でもそれは映画の見方もそうなんですけど、障がいのある方は、自分の持てる感覚を使ってわからないこと、つかめないことを一生懸命集中してわかろうとしたりして。対象との向き合い方が真剣だなと思います。だから簡単に決裂しないし、対話が生まれる。

対話に希望を見いだす

――この作品はまさに対話の映画だと思いましたね。

感想なんかでも「こんな会議見たことない」「希望になりました」という声が多くありましたね。

――会議の参加者によっては、言いたいことを言えなかったという経験をした人もいるんじゃないかと思いますしね。

職場でも伝わらないことが多くて、悔しい思いしたという人が涙ながらに感想を言っていたりして。みんなどれだけつらい会議を経験してきたんだろうって思ってしまいましたが(笑)。

――でもだからこそこの映画に登場する対話に希望を見いだしているのかもしれないですね

何かを経験する前に大丈夫かなと思って引っ込めるんじゃなくて、当事者と話し合って何が必要なのか。話し合ったりすれば喜んでくれるということもありますからね。

――それは障がいのあるなしに関係なく、人をもてなすということに通じると思います。

本当にそれでいいと思うんです。シティライツ(バリアフリー映画鑑賞推進団体)も試行錯誤しながら、優しい障がい者の方々に助けられてここまで来たし、映画館まで作ってしまったわけですからね(笑)。

壬生 智裕 映画ライター

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みぶ ともひろ / Tomohiro Mibu

福岡県生まれ、東京育ちの映画ライター。映像制作会社で映画、Vシネマ、CMなどの撮影現場に従事したのち、フリーランスの映画ライターに転向。近年は年間400本以上のイベント、インタビュー取材などに駆け回る毎日で、とくに国内映画祭、映画館などがライフワーク。ライターのほかに編集者としても活動しており、映画祭パンフレット、3D撮影現場のヒアリング本、フィルムアーカイブなどの書籍も手がける。

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