44歳会社員「年収半減」でも業務委託を選んだ勝算 「それだけあれば、兼業で何とかカバーできる」

✎ 1〜 ✎ 3 ✎ 4 ✎ 5 ✎ 6
拡大
縮小

田代:人事部に配属されたのは偶然でしたが、仕事に興味が湧いて、社会保険労務士の資格も取り、「この先、人事を一生の仕事にしていこう」と思っていた矢先でしたから。

楠木:上司はどんな反応だったのですか?

田代:私が申し出たらその場で、「いいんじゃないか」というニュアンスがあって、その時点で方向性が決まった感じはありました。

楠木:それはすごい。ただ、上司が「いいだろう」と言ってくれても、会社が認めてくれるかどうかはまた別問題でしょう。

田代:そうですね。最初に「業務委託に」と申し出た面談から、正式に会社からOKが出るまで、1年ほどかかりました。私が44歳の時でした。

「妻は反対していたのですが…」

楠木:勤務の形は、どうなりましたか?

田代:「週3日午前中は、これまで通り出社をして、それ以外はフリーランス」になりました。週に3日は私のほうから提案しました。その時に社内で手掛けていたのが人事制度を改定するプロジェクトで、それを完成させたかったのです。プロジェクト以外の社内の仕事としては、若手や新しく人事部に転入してきた人たちからの相談対応など、コンサルティング的な業務を担当するようになりました。社労士の資格を持ってはいましたが、社会保険の手続き業務などの社労士がメインにやる業務は引き受けませんでした。

楠木:報酬はどのように決めたのですか?

田代:そこは最後までお互い、話を避けていたところがありましたね。平日5日のうち3日は会社に来るということで、当時の年収の半分くらいになりました。妻は専業主婦だったし、子供はまだ小さかったので、それでもきびしい状況でした。でも逆に「それだけあれば、第二の本業で何とかカバーできるのでは」とも思っていました。

楠木:奥様はよく独立を許してくれましたね。

田代:正直ハードルは高かったです。会社の業績もよかったですし、妻は反対していたのですが、妻の両親が前向きな方たちで、「そこまでやりたいと言っているんだから、まあいいんじゃないか」と言ってくれました。もし家族全員が、最後まで徹底的に反対していたら、さすがにひるんだかもしれません。

次ページ会社員の感覚が強みに
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本製鉄、あえて「高炉の新設」を選択した事情
日本製鉄、あえて「高炉の新設」を選択した事情
パチンコ業界で「キャッシュレス」進まぬ複雑背景
パチンコ業界で「キャッシュレス」進まぬ複雑背景
ヤマト、EC宅配増でも連続減益の悩ましい事情
ヤマト、EC宅配増でも連続減益の悩ましい事情
半導体需給に変調の兆し、歴史的な逼迫は終焉?
半導体需給に変調の兆し、歴史的な逼迫は終焉?
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT