44歳会社員「年収半減」でも業務委託を選んだ勝算 「それだけあれば、兼業で何とかカバーできる」

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田代:人事部に配属されたのは偶然でしたが、仕事に興味が湧いて、社会保険労務士の資格も取り、「この先、人事を一生の仕事にしていこう」と思っていた矢先でしたから。

楠木:上司はどんな反応だったのですか?

田代:私が申し出たらその場で、「いいんじゃないか」というニュアンスがあって、その時点で方向性が決まった感じはありました。

楠木:それはすごい。ただ、上司が「いいだろう」と言ってくれても、会社が認めてくれるかどうかはまた別問題でしょう。

田代:そうですね。最初に「業務委託に」と申し出た面談から、正式に会社からOKが出るまで、1年ほどかかりました。私が44歳の時でした。

「妻は反対していたのですが…」

楠木:勤務の形は、どうなりましたか?

田代:「週3日午前中は、これまで通り出社をして、それ以外はフリーランス」になりました。週に3日は私のほうから提案しました。その時に社内で手掛けていたのが人事制度を改定するプロジェクトで、それを完成させたかったのです。プロジェクト以外の社内の仕事としては、若手や新しく人事部に転入してきた人たちからの相談対応など、コンサルティング的な業務を担当するようになりました。社労士の資格を持ってはいましたが、社会保険の手続き業務などの社労士がメインにやる業務は引き受けませんでした。

楠木:報酬はどのように決めたのですか?

田代:そこは最後までお互い、話を避けていたところがありましたね。平日5日のうち3日は会社に来るということで、当時の年収の半分くらいになりました。妻は専業主婦だったし、子供はまだ小さかったので、それでもきびしい状況でした。でも逆に「それだけあれば、第二の本業で何とかカバーできるのでは」とも思っていました。

楠木:奥様はよく独立を許してくれましたね。

田代:正直ハードルは高かったです。会社の業績もよかったですし、妻は反対していたのですが、妻の両親が前向きな方たちで、「そこまでやりたいと言っているんだから、まあいいんじゃないか」と言ってくれました。もし家族全員が、最後まで徹底的に反対していたら、さすがにひるんだかもしれません。

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