44歳会社員「年収半減」でも業務委託を選んだ勝算 「それだけあれば、兼業で何とかカバーできる」

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田代:そこまで積極的でなくても、「うちは雇用契約を業務委託契約に切り替えたいという人がいたら認めるよ」ぐらいの姿勢でアナウンスしてくれたら、社員も言い出しやすいでしょうね。

「あのとき踏み出してよかった」

田代:私の場合、40代初めまでは会社にどっぷりで、会社と家の往復しかしていませんでした。でも「外に出てみたい」という気持ちはあって、『週末起業』という本を読んで、著者の藤井孝一さんの主催する交流会に参加しました。『インディペンデント・コントラクター』を読んだ時もすぐ、著者の秋山進さんに話を聞きました。本を読んだだけで何も行動しないで終わっていたら、違った人生を歩んでいたかもしれません。

楠木:私も全く同感です。興味のあるところに実際に足を運んでみる、話を聞いてみるという肌感覚を得ることが大事ですね。

田代:結局、40代で迷いながらも業務委託を選んだわけですが、今になって振り返ってみると、「あのとき踏み出してよかった」と正直思います。それができたのは、上司と会社に恵まれていたからでしょう。

楠木:これから先のキャリアについては、どんな構想を持っていますか?

田代:私は、現在61歳で、生まれも育ちも福岡県直方市ですが、故郷の街に貢献したい気持ちがあります。今から65歳までに足がかりとなる拠点を直方市に作って、そこで今とは違う仕事を始めたいと考えています。私の場合、高校は広島県福山市でしたし、大学は神戸で、妻の実家は四国なので、そういった青春時代を過ごしたところを中心に、あちこち回って仕事できないかと思っています。

楠木:直方市には今も同級生は多いのですか?

田代:そうなんです。帰るといろんな人が集まってくれて心強いです。

楠木:老後はそういう仲間も大切ですね。もし神戸に事務所を作られるときは声を掛けてください。私も神戸出身なので、今後事務所を持つことも考えています。

田代:いいですね。ぜひ実現させて、2人で面白いことをやりましょう!

楠木:本日はありがとうございました。

(構成:久保田正志)

楠木 新 人事コンサルタント

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くすのき あらた / Arata Kusunoki

1954年神戸市生まれ。1979年京都大学法学部卒業後、生命保険会社に入社。人事・労務関係を中心に経営企画、支社長等を経験。47歳のときにうつ状態になり休職と復職を繰り返したことを契機に、50歳から勤務と並行して「働く意味」をテーマに取材・執筆・講演に取り組む。2015年に定年退職した後も精力的に活動を続けている。2018年から4年間、神戸松蔭女子学院大学教授を務めた。現在、楠木ライフ&キャリア研究所代表。著書に、『人事部は見ている。』(日経プレミアシリーズ)、『定年後の居場所』(朝日新書)、『定年後』『定年準備』『転身力』(共に中公新書)など多数。

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