シトロエン C5 X「伝統の味」が濃厚である理由 ファンからの注目度も高い新フラッグシップ

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2785mmのロングホイールベースのおかげで、後席は身長170cmの僕なら足が組めるほど。前席より一段高めに座るのに、頭上空間がしっかり確保されていることも感心した。外から見ると長めに感じるルーフは、居住性を考慮した結果でもあった。

ラゲッジスペースは通常でも545リッター、後席背もたれを前に倒せば1640リッターもの容積を確保できるうえに、大きく開くリアゲートのおかげでアクセスがしやすい。たしかに、ワゴンやSUVの機能を併せ持っているといえる。

大きなリアゲートを持つハッチバックスタイル
大きなリアゲートを持つハッチバックスタイル(写真:Stellantis)

C5 Xのパワーユニットは、ガソリンエンジンとPHEV(プラグインハイブリッド)がある。どちらもシトロエン伝統のFF(前輪駆動)で、エンジンは1.6リッター直列4気筒ガソリンターボだ。乗ることができたのはガソリン車の上級グレード、「シャインパック」だった。

最高出力133kW/最大トルク250Nmという数字は、Dセグメントのセダンとしては控えめに映るかもしれないが、車両重量が1520kgと軽めなこともあって、加速は十分。遮音も車格にふさわしいレベルにあり、エンジン音が気になるようなシーンはなかった。

シトロエンからは抜け出せない

プラットフォームはC5エアクロスSUVと同じ「EMP2」で、DSやCXが搭載したハイドロニューマチック(ハイドロ)の現代版と言える、プログレッシブ・ハイドローリック・クッション(PHC)を採用するところも共通する。

現役ハイドロオーナーとして接すれば、揺れの周期などに違いはあるものの、最近の新型車としては異例にソフトで、“ふんわりゆったり”という表現が当てはまる。人が乗り降りするだけでこんなに上下するクルマは、最近では珍しい。

「シトロエンらしい」乗り心地を実現している
「シトロエンらしい」乗り心地を実現している(写真:Stellantis)

C4に続いて、車格のわりに細めのタイヤを履いていることも、ソフトに感じる一因だろう。使うメカニズムは違っても、目指す世界は一致していると感じた。そのわりにコーナーでのロールは抑えられていて、サイズから想像するよりすんなり曲がれるけれど、キビキビしているわけではない。

でも、それはCXやXMも似たような感じだった。だから、きっと昔からのシトロエン好きは、十分満足できるはずだ。筆者も高速道路をゆったりクルージングしていて、「やっぱりシトロエンからは抜け出せない」と思ってしまった。

しかも、価格はベースグレードの「シャイン」であれば500万円以下。グローバルでも日本でも好調なシトロエンの、現時点での集大成がこのプライスと考えれば、お買い得と思う人が多いはずだ。

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森口 将之 モビリティジャーナリスト

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もりぐち まさゆき / Masayuki Moriguchi

1962年生まれ。モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。著書に『富山から拡がる交通革命』(交通新聞社新書)。

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