たとえば、ロサンゼルス・スタジオの廊下に大勢が集まって、夜中にミニゴルフ大会やスクーター競争をしたりする(毎回激戦が繰り広げられ、シニア・プロデューサーのトム・ピーターはある夜、自宅で寝ていたところを叩き起こされ、戻ってこないと君の記録がついに破られそうだぞ、と言われてスタジオへすっ飛んでいった)。
インターンたちは張り切って「ドレスダウン・フライデー」を実施し、ジェダイやカブスカウトそのままのコスチューム姿で登場した。
「ピクサー・パルーザ」と呼ばれる会社主催のどんちゃん騒ぎのパーティーでは、従業員たちが20以上ものバンドを結成し、お気に入りの曲をカバーして演奏した。
だがこうしたピクサーの伝統は、生産性を犠牲にしているわけではない。それどころか、ピクサーのチームは業界でもっとも勤勉で、生産性が高いと言われている。
これは何も幸運な偶然ではない。ピクサーおよびウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオの元社長、エドウィン・キャットマルは、生産性の高いクリエイティブなチームをつくるには、陽気さと遊び心が基盤として不可欠だと信じていた。
ユーモアのあるチームは業績が好調
その効果は、研究においても確認されている。ネイル・リーマン=ウィーレンブロックとジョゼフ・アレンが行った、352名の従業員からなる54チームを対象とした実験では、1時間のチーム会議を録画したのち、上司によるチームの業績評価を分析した。
その結果、ユーモアのあるチームのほうが、会議中もそれ以外の時間においても、機能的なコミュニケーションを図り、問題解決のための行動を取っていただけでなく、チームの業績もよいことがわかった。
このような遊び心のある文化こそ、ピクサーの各チームの成功の秘訣だったのだ。
キャットマルのリーダーシップのもと、ピクサーは『バグズ・ライフ』や『モンスターズ・インク』や『ファインディング・ニモ』などの大ヒット作品を世に送り出し、最先端のコンピューター技術によって、アニメ映画に革命をもたらした(おかげで、大人たちも虫やもじゃもじゃの青いモンスターや魚にほろりと泣かされた)。