社長が訴えたかったメッセージは「新入社員はさまざまな困難に立ち向かうことになるだろうが、きっと道は開ける、必ずやり抜けるはずだ」というもの。我々のアドバイスは、「新入社員の立場に立ち、彼らが経験するであろう困難を描写してみよう」というものだった。
「営業に回った先で、心ない言葉を浴びせられたり、何度も門前払いをされたり、厳しい口調でしかられることもあるかもしれません」、「お客様に対し、なかなかうまく話ができず、自己嫌悪に陥ることもあるでしょう」、「もしかしたら、同期が先に契約をとって、悔し涙を流すことだってあるかもしれません」――といったような感じだ。
こうすれば、聞いている人の頭の中で情景が浮かび、「自分の話」として受け入れられるようになる。そうした情景描写に続いて、決してあきらめないでというメッセージをインパクトのある言葉にして何度も呼びかけた。
景気解説や抽象的な言葉は一切省き、潔く、そして、聞き手の心に響く言葉の贈り物。新入社員にも非常に好評だったそうだ。
聴衆の心をわしづかみにする高田マジック
聞き手の気持ちになって、その頭の中にあるキャンバスに絵を描くように話す。これはアメリカの大統領も多用する代表的なコミュニケーションテクニックだ。日本で、この「お絵描き話法」の達人といえば、通販会社のジャパネットたかたの高田明元社長だろう。
「デジカメも600万画素になったら、こんなに大きく伸ばせるんですよ。毎月1枚、こういう大きな写真を1枚作ったらね、1年に12枚。これをお子さんに残してあげたらね、大変な宝物になりますよ」
「お孫さんやお子さんの運動会の姿をきれいに残せるんですよ」
高田さんの説明は、常に使う人の目線に立っている。難しい専門用語ではなく、ユーザーが、自分が使っている姿を容易に想像できるわかりやすい描写で、商品の魅力を語るのだ。
「お客様は機能や使い方ではなく、『その商品を買ったら、自分の生活がどのように豊かになるのか』に興味がある。だからこそ、商品で生活がどのように変わるのかを具体的にイメージできるように工夫している」と高田さんは語っている。
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