「車は減速」「暖房19度」仏節電対策の中身が過酷 ガス危機で始まる「寒くて暗い」省エネ生活
企業に対しては、オフィスをほぼ完全に消灯して節電できるよう、週に何日かの在宅勤務の検討を要請してもいる。フランスの有力な経営者団体「フランス企業運動(MEDEF)」の会長は6日、そうした対策が「望ましい結果の達成」につながるかはっきりしないとして反発した。
フランスの取り組みは、ロシアのガス依存度をヨーロッパ全体で引き下げることを狙うヨーロッパ委員会の大計画に基づいている。ヨーロッパ委員会が「ロシアの燃料に対するヨーロッパ連合(EU)の依存度を減らすことでウクライナを支援することを目的としている」とするこの計画は、程度の差こそあれ、ドイツ、イタリア、スペインなど、EU加盟28カ国の多くで取り入れられている。
エネルギー配給制の足音
ヨーロッパの市民や企業の多くが省エネに協力すれば、各国政府はエネルギー配給の強制や計画停電といった、より悲惨な事態を避けられるという発想がそこにはある。
ヨーロッパでは天然ガスが主な暖房源で、発電に使用している国も多い。2月にロシアがウクライナに侵攻して以降、ガスと電気の料金はともに高騰。ヨーロッパ全体でエネルギー危機と記録的なインフレを引き起こしており、鉄鋼、化学、ガラスメーカーといったエネルギー集約型の企業はすでに一時的な操業停止を余儀なくされるようになっている。
ヨーロッパ委員会は来年3月までにガス消費量を15%削減したい考えだ。15%というのはロシアがヨーロッパへのガス供給を完全停止するという最悪のシナリオを想定した数字で、そうした事態となればEU諸国ではガスが15%不足する。
ロシアからのガス供給はここ数カ月で著しく減少。各国は必死でガス備蓄を進めているものの、最悪のシナリオは現実になりつつある。
各国政府は経済的なショックを抑えるため、主に痛みの伴わない省エネで先手を打つよう国民に呼びかけている。EUの計画では、15%の削減目標が達成できない場合、一部の国はエネルギー配給制への切り替えを求められることになるかもしれない。
フランスで始まったのは、こうしたエネルギーの「節制」だ。
政府は一般家庭に対し、暖房温度の上限をリビングで19度、寝室で17度に、温水器の設定温度を55度に下げるよう呼びかけている。使っていないコンピューターやテレビのコンセントを抜く、洗濯機や食洗機など電力消費の大きな家電製品の使用を夕方のピーク時からずらす、といったことも推奨している。