日本人が「安月給に甘んじるしかない」構造的欠陥 経済成長を否定せず、企業の効率性向上が必要だ

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成長が止まったのは、賃金だけではない。以下に述べるように、日本経済のほとんどの指標について見られることだ。それは、日本経済が構造的に深刻な問題を抱えていることを示している。

それらを解決しない限り、「構造的な賃金上昇」は実現できない。以下に述べるさまざまな指標が現状のままで、賃金だけがめざましく上がるということは、あり得ない。

「構造的な賃上げを実現する」というのであれば、岸田首相は、これらの困難な課題をどう解決するかを示さなければならない。

日本企業の効率性は、世界で最下位

日本経済が深刻な病に冒されていることを明確な形で示しているのが、スイスのIMD (国際経営開発研究所)が作成する「世界競争力」のランキングだ。

6月14日に公表された2022年版では、日本の順位は、対象63カ国・地域のうちで34位だった(2021年は31位)。

アジア・太平洋地域でみても、14カ国・地域中10位で、マレーシアやタイより順位が低い。

このランキングは、「経済状況」「政府の効率性」「ビジネス効率性」、そして「インフラ」という4つの項目について評価を行っている。そのうちの「ビジネス効率性」においては、世界第51位だ。

ところで、このランキングにおける日本の順位は、昔からこのように低かったわけではない。

日本の順位の推移をみると、公表が開始された1989年から1992年までは1位であった(図表2参照)。その後も、1996年までは5位以内だった。

IMDランキングでの日本の順位 

ところが、1997年に17位に急落。その後、20位台で推移し、2019年に30位となって以降は4年連続で30位台となってしまったのだ。

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