なお、IMDは、「デジタル競争力ランキング」も作成している。2021年版では、日本は、64カ国中28位と、過去最低順位を更新した。
1人当たりGDPの成長が、30年前に止まった
図表3には、日本の1人当たりGDPの推移を示す。
1990年頃まで成長を続けたが、そのあたりで頭打ちになった。それ以後は成長せず、横ばいになった。
これは、図表2で日本のランキングが低下し始めた時期とほぼ同じだ。また、図表1で賃金が下落を始めたのとも同じ頃だ。
つまり、この頃に、日本経済の構造が大きく変わったのである。
なお、1人当たりGDPが横ばいであるのに賃金が下落したのは、労働分配率が低下したからではない。
総人口はほぼ減少している(2010年から2020年までの減少率は2.13%)のに対して、就業者数は増加した(2010年から2020年までの増加率は4.3%)ために、1人当たりGDPは横ばいでも、賃金が低下したのである(つまり、分子の違いではなく、分母の違いである)。
就業者数の増加をもたらした大きな原因は、非正規労働者の増加だ。非正規労働就業者は労働時間が短いために、就業者全体として見た賃金が下落するのだ。
実際、OECDの統計で見ると、図表1に見られるのと同じように1990年代後半の賃金下落現象は見られるものの、図表1に見られるよりは穏やかな下落になっている。
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