一介の小売業者がGAFAの攻勢から防衛できた理由 エコシステム戦略は持たざる弱者のためにある
しかし、その市場メカニズムを司るプラットフォーマー自体が、特定の取引業者と連携して、他の業者よりも一歩踏み込んだ顧客体験を提供することは憚られることになる。
これに対し、ウェイフェアは限られた少数の事業のパートナーたちと、ウィン・ウィンの関係を構築しようとした。自社の取引業者にしっかり利益を還流するために、価格で競争させるのではなく、業者たちと手を取り合い、製品の詳細情報を提供してもらうことを通じて、包括的かつ上質な顧客体験を作り上げることを選択したのだ。
この戦略は、家具分野に絞り込み、さらに商品数も絞り込んだセレクトショップであったからこそできたものである。家具供給業者との、密なウィン・ウィンの関係を築いた、上手なエコシステムだと評価できるだろう。誰もが出品でき、アイテム数が無数にあるアマゾンでは、模倣が難しいサービスなのである。
こうしてウェイフェアは、「エコシステム戦略」によって、小売業界の大巨人からしっかり防衛を果たすことに成功したのである。
既存のエコシステムを継承する
もし皆さんがウェイフェア同様に、企業連合で包括的顧客体験を作り上げたいと思ったならば、どうすればよいだろうか。
『エコシステム・ディスラプション』では、この点についても、リソースに制約がある企業でも無理なく実践していけるアプローチを提案している。それは「既存のエコシステムを継承し、小さいところから、試しながら変革を始める」というものである。
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