一介の小売業者がGAFAの攻勢から防衛できた理由 エコシステム戦略は持たざる弱者のためにある

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こうした企業の新戦略の話を聞くと、少なくない人が「自社には関係のないことだ」と思うらしい。カメラの話は、要するにアップルがどうやったかという話で、ショッピングの話はイオンモールのような巨大企業の話である、と。

私が最も危惧しているのが、この「顧客の価値の全体をカバーするなんて、GAFAやイオンのような会社でしかできない戦略である」という誤解である。

実際のところ、エコシステム戦略はむしろ経営資源に乏しい弱者のための戦略である。この『エコシステム・ディスラプション』で活写されているのも、もっぱら持たざる側・業界弱者が、GAFAのような巨大企業の侵攻にどうエコシステムとして対応したかである。

今回は、エコシステム戦略は弱者が強者の基盤を覆すための戦略だということを、アドナーの著作でも紹介されていた「ウェイフェア」という会社の事例を用いて説明していきたい。

エコシステムで防衛したウェイフェア

ウェイフェア(wayfair)は、アメリカのeコマース家具販売会社である。皆さんはおそらくウェイフェアという会社をご存じないだろう。そう、知らないということが、ここでは重要なこと。世界的にも無名な、アメリカの一介の家具eコマース会社が、見事にアマゾンの侵攻から自社の市場を守ってみせた事例なのである。

ウェイフェアは、2002年創業の会社である。当時は一介の家具eコマース会社でしかなかったが、2014年までには製造業者や流通業者との連携の下に、効率的な配送システムと、「自宅のコンセプトに合致した家具を探し、部屋のレイアウトを考える楽しみ」をオンラインで提供できるようになっていた。

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