一介の小売業者がGAFAの攻勢から防衛できた理由 エコシステム戦略は持たざる弱者のためにある

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皆さんが家具を買うときには、決して、値段や材質、大きさのカタログスペックを見て、単体の製品として購買をしているわけではないだろう。家具を入手するとは、部屋のレイアウトや、家具に求める機能の吟味から、最後には現物の質感のフィーリングを得るところまでが、顧客体験なのである。

これらのことを、デジタル空間上で実現できるとしたら、皆さんはそのサービスのことをどう評価するだろうか。

ウェイフェアは、まさにそれを実行したのだ。

同社は、家具メーカーと連携し、顧客の居間が再現されたバーチャル空間上に、3Dモデリングされた商品をレイアウトするシステムを作り出した。顧客はウェイフェアのウェブサイト上で、自室に購入希望の家具を配置し、どんな空間になるかをありありとイメージすることができる。

画像や動画を駆使し、機能やサイズはもちろん、最大限に質感のフィーリングまでをウェブサイト上で再現してみせることで、顧客が求めていた家具の購買体験をオンラインで実現したことで、ウェイフェアはアマゾンの攻勢のなかで自社の市場を守り、さらなる成長を手にすることができたのである。

結果、今やウェイフェアはアメリカの新興eコマース勢力、家具産業のDXの先鋒として、株式市場でも高く評価される会社の1つとなっている。

パートナーと連携し、模倣困難なサービスを築く

アマゾンよりもはるかに小さな規模の企業でありながら、ウェイフェアがこれを実現できた理由は何か。それは、まさにその「小ささ」を強みに変えることができたからである。膨大な商品数、世界中の無数の取引業者たちがしのぎを削る、アマゾンという名の「完全競争市場」では、価格下落の圧力もかかり、各社はそれぞれに独自のウェブマーケティングを実践する。

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