「40~50代からの後半生」充実する人しない人の差 毎年1テーマ勉強を10年続ければ10領域に精通

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ここで凄い人を紹介します。私が勤務している大学の同僚の先生で、定年退官後も客員教授として引き続き教育に携わっている方なのですが、それはそれは見事です。

退官する際にお話ししたときは、「ラテン語を学び始めた」と言われました。思わず尋ねました。

「どうしてですか?」

「西洋の言語の源はラテン語だから、一度、それを勉強してみたくなって」

なるほどね、と私は思いました。

しばらくしてフェイスブックを見ていると、「そろそろ旧約聖書(詩編と知恵)の期末試験が始まる」とのコメント。えぇ? 今度は聖書を勉強しているんだ……。

最近お会いしたときには、「今月からドイツ語学校に通うことにしました」。若々しく両の眼が輝いています。

なかなかここまではできませんが、例えば、昨年は「マーケティング」について勉強して面白かったから、今年は、同じビジネス領域で「経営戦略」について勉強してみよう、でもいいですし、目先を変えて、「世界遺産」について今年は勉強してみようでもかまいません。

テーマ自体は問いません。毎年、1つのテーマに焦点を当てて、勉強する。習慣化できればしめたもの。歳を重ねるごとに確実に増える財産になります。

では、図解タイム。

紙1枚か、2枚を取り出してください。私の中期計画、年次計画の図も参考にしながら、まずは計画を紙に落とし、「見える化」するところから始めましょう。あなたの後半生が動き始めます。

計画か、それとも創発か

もちろん、計画してもその通りにならないのが現実です。先述の通り、私の場合は7割か8割の達成度でした。

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そもそも計画とはなんぞや。

「物事を進める上で、なくてはならない指針」

「皆で目標を共有するために、必須の行為」

その通りです。ですが実は、経営戦略論において必ずしも決着していない大きな論争があるのです。それは、経営にとって重要なのは、「計画か、創発か」という問いです。

創発とは、部分の単純な総和には留まらない何かが「全体を通して現れてくる現象」を指します。水の場合は、水素と酸素の個別の特徴では表しきれない特徴やふるまいが、水として創発していました。

いくつかの出来事や偶然が重なって、想定しなかった方向へ物事が進み、何かが達成してしまう。そんなことも多々あります。要するに、無計画の偶然性ですが、それも創発の一種です。計画が大事か、創発が大事か。優れた業績を上げるために、経営戦略論ではそんな議論が続けられているのです。

前回:『40歳で人生の83%が「終わっている」という衝撃

平井 孝志 筑波大学大学院ビジネスサイエンス系教授

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ひらい たかし / Takashi Hirai

東京大学教養学部卒、同大学院理学系研究科修士課程修了。マサチューセッツ工科大学(MIT)MBA。早稲田大学より博士(学術)。ベイン・アンド・カンパニー、デル(法人マーケティング・ディレクター)、スターバックス(経営企画部門長)、ローランド・ベルガー(執行役員シニアパートナー)などを経て現職。コンサルタント時代には、電機、消費財、自動車など幅広いクライアントにおいて、全社戦略、事業戦略、新規事業開発の立案および実施を支援。現在は、経営戦略、ロジカル・シンキングなどの企業研修も手掛ける。早稲田大学経営管理研究科客員教授、キトー社外取締役、三井倉庫ホールディングス社外取締役。著書は『本質思考』他多数。

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