ピザハットが「ごはんピザ」を発売する深刻理由 親会社が変わった影響とブランドイメージ強化

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また小田氏によると日本ピザハットの過去3年間の全体売上高は2020年3月期は263億円、2021年同期は347億円、2022年同期は335億円。デリバリーピザチェーンであるピザハットが、コロナ禍に追い風を受けて業績を伸ばしたことが明らかになっている。

こうした流れを呼び込む端緒となったのが、マーケティング対策やデジタル化など、コロナ前からの各種改革だったという。

とくに、2020年の業績を押し上げたのはピザハットオンライン限定で展開した「全品30〜50%OFF」だ。今でこそ、ライバルのドミノ・ピザを始め、どこのチェーンでもこうしたお得なキャンペーンを高い頻度で行っている。しかしFC店も多いピザハットにとって、大きな値引きの導入は思い切った決断だったようだ。

勝因は「わかりやすさ」

成果が実を結んだ勝因は「わかりやすさ」だったという。

「それまでも値引きのキャンペーンは行っていた。しかし、商品や店舗が限定されているなど、お客様にメリットが伝わっていなかった。『ピザ全品30〜50%』とシンプルにしたことで、一気に客数のアップにつながった」(小田氏)

そして改革第2弾として投入したのが「個食化」に着目して開発した「MY BOX」だ。Sサイズピザ+サイドメニューと、1人分の量、さらに持ち帰り700円、デリバリー1000円(いずれも税抜き)という価格で発売。

「もともとピザハットのボリュームゾーンは30〜40代の男性だが、この商品は女性と若い世代のニーズを捉えた」(小田氏)

ピザといえば圧倒的に多いのが、パーティーでの需要。しかしこれだと、1人あたりの利用回数は年に2回ぐらいだ。ピザの日常化は同チェーンのみならず、宅配ピザチェーン各社の課題と言っても過言ではない。そこへ、コロナ禍でそれまでの常識が切り替わり、デリバリーがより日常的になった。また大勢で分け合って食べるよりは、おのおのが1人分を食べるスタイル、すなわち「個食」へと変化した。リモートワークにより、ランチのデリバリー需要も高まった。

こうしたニーズの変化に、1000円を切る金額で手軽に1人分のピザが食べられる「MY BOX」は非常にうまく切り込んだことになる。

ピザチェーンでは構造的にあきらめざるをえなかった、ある問題の解決にもつながった。

「宅配ピザの構造として、注文が土日に集中するが、平日の暇なときも店をあけて人員を確保しなければならない、という経営の非効率がある。1人分商品、とくにランチ需要がその時間帯にうまくはまった」(小田氏)

結果、2021年1月に発売した「MY BOX」は過去最大の大ヒットとなり、既存店売り上げも131%に伸びた。

また現場からの叩き上げである小田氏が大きなメリットを感じたのが「暇な時間がなくなることで店舗に活気が生まれ、店舗スタッフのモチベーションアップにつながる」ことだったという。

それにしても気になるのが、1000円という金額でデリバリーを含め採算はとれるのか、ということだ。

「基本的に採算はとれる。基本的に、というのは、配達にとても時間がかかるような遠方でなければという意味。現在当社ではエリアの適正化(小商圏化)を図っている。さらにランチタイムのようにアルバイトが待機してしまうような時間帯の稼働率を上げることで収益性がアップする」(小田氏)

現状、30分以内に配達できる店舗は全店のうち70%ほどだが、80%を目標に店舗を増やしていくそうだ。

そんなピザハットにとってネックとなるのが、ブランドイメージの曖昧さだ。

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