ショートパンツ姿の洋介さんはよく日焼けしていて店内に響き渡るような大きな美声を持っている。しかし、なぜか伏し目がちで、話すたびに「エヘヘ」という照れ笑いの量が増えていき、最終的には何を言っているのかわからなくなった。照れ屋なのだろう。
直前まで取材を受けることを知らなかったという妻の友美さん(仮名、39歳)は対照的だ。遠慮なくハキハキと話す。天真爛漫な少女のような雰囲気を漂わせている。専門学校を卒業してから現在に至るまで自由に生活しつつ、やりたいことはすべてかなえてきたらしい。得な性格をしている。
仕事が安定したことをきっかけに婚活を開始
友美さんのほうが明らかに話し上手だが、まずは「言い出しっぺ」の洋介さんから話を聞こう。38歳で友美さんと出会って結婚するまでは結婚を考えたことはなかったのだろうか。定番の質問をすると、洋介さんはいきなり言葉を濁し始めた。
「(女性と)付き合ったことはなくはありませんが、少ないです……。結婚まで考えて付き合ったことはありません。仕事が落ち着いていなかったので考えられませんでした」
洋介さんは学生時代から理系で、卒業後はエンジニアとして北陸にある会社で働いていた。リーマンショックの影響もあって転職を繰り返し、教員を目指して学習塾で働いていた時期もある。現在の勤め先にエンジニアとして返り咲いたのは30代半ば。この頃に少しずつ婚活を始めた。
「この仕事は続くかも、と思ったのと、土日休みなので時間を見つけやすくなったからです……」
やっぱり恥ずかしがって口数が少なくなる洋介さん。その困惑が伝わったのだろうか。さきほどまでご機嫌だった娘さんがぐずり始めた。その世話を洋介さんに任せて、残りは友美さんに話してもらうことにした。
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