スバル「2拠点生活」に込めた未来へのメッセージ 産業の大変革期に求められる「スバルらしさ」

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特に民間企業の場合、ESG投資を筆頭とする直近での新たなる時代変化の捉え方と、「ひと中心」という社会全体を俯瞰する考え方とのバランスについて、経営陣と従業員層の間で温度差があるように思う。

話をスバルに戻すと、現状では水平対向型エンジン、シンメトリカルAWD、アイサイトといったハードウエアの独自性や、モータースポーツに起因するSTI(スバルテクニカインターナショナル)の強いブランド力、さらに販売台数におけるアメリカ市場への強い依存といった企業としての姿がある。

今回の体験会にて「アウトバック」や「レヴォーグ」(筆者撮影)

そのうえでスバル本社、スバル関連事業者、そしてスバル販売店に携わるすべての人々が「スバルがこれから先、持続的に成長していくためには、いつ、何を、誰が、どのように変えていかなければならないのか」という大きな視点で議論するための環境づくりが、早期に必要であるはずだ。

要するに「スバルらしさ」のあり方について、今回取材した移住者や2拠点生活者のように「覚悟を持って本気で」考える必要がある。

メディアを通じて社内にも

スバル里山スタジオは、そんな議論を行うための場になりうるのではないだろうか。

だからこそ今回、スバルは「里山life体験会」という、これまでの新車試乗会とは異なる実験的な試みを、メディアという媒介を通じて、社外向けのみならず、スバル関係者というインナー向けの視点も踏まえて実行に移したのだと思う。

「SUBARU×里山life体験会」参加者の集合写真 (写真:SUBARU)

体験会初日、夜のプレゼンテーションの最後のパートでは、スバル里山スタジオに関する初期の目的、そして開設から約1年の間に行ってきたさまざまな報道陣向けイベントの紹介を経て、ラストページには次のような表記があった。

〈課題〉
・「自然」を維持することの難しさ
→定期的な除草、間伐作業
→害獣、水害、地すべり対策
〈今後の活用〉
・社員ボランティアが参加し、プロジェクト化
→SUBARUらしさを再確認できる拠点に (本文ママで転載)

スバルは今、未来に向かって本気で変わろうとしているのだ。

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桃田 健史 ジャーナリスト

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ももた けんじ / Kenji Momota

桐蔭学園中学校・高等学校、東海大学工学部動力機械工学科卒業。
専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、EV等の車両電動化、そして情報通信のテレマティクス。

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