北朝鮮大使の談話は日朝関係改善のシグナルか 日朝平壌宣言から20年、日本に好感持つ金正恩

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2002年9月、平壌での首脳会談を終えて「日朝共同宣言」に署名し、握手する小泉純一郎首相(当時、左)と北朝鮮の故・金正日労働党総書記(写真・時事、代表撮影)

日本と北朝鮮は2002年9月に首脳会談を行い、速やかな国交正常化などで合意した。当時の金正日総書記と小泉純一郎首相が署名した「日朝平壌宣言」(平壌宣言)が発表された。

2022年9月17日で平壌宣言から20年が経ったが、今でも日朝関係は霧の中にある。国交正常化はもとより、北朝鮮は激しい対日批判を行う一方で、日本は対北朝鮮制裁にどこよりも積極的であるなど、両国の対決姿勢は続いている。今では、日朝平壌宣言がきちんと履行されない責任を、双方が押しつけている状況だ。

拉致問題は解決済みというが……

北朝鮮は2022年9月16日、外務省の宋日昊(ソン・イルホ)大使が談話を発表した。この中で「日本は朝日(日朝)関係の性格と本質を否定し、平壌宣言を拉致、核、ミサイル問題の解決のためのものに歪曲して終始一貫、自らの不純な政治的目的を実現するために悪用している」と非難し、「日本政府は朝日平壌宣言に対する背信的行為の責任から絶対に逃れられない」と主張した。

これに対し、日本の松野博一官房長官は2022年9月16日、宋大使の談話について「2002年、5人の拉致被害者が帰国した後、1人の被害者も帰国できずにおり、依然として多くの被害者が北朝鮮に残留していることは痛恨の極み」という立場を明らかにした。

松野官房長官が言及したように、日朝対立の主要イシューは北朝鮮による拉致問題だ。日本は1980年代まで、17人の日本人が北朝鮮工作員などにより拉致されたものと把握している。平壌宣言を契機に5人が帰国したことを除けば、12人が依然として北朝鮮に抑留されているという立場だ。

しかし、北朝鮮は12人のうち8人がすでに死亡したとし、残り4人は北朝鮮が行ったものではないと反論している。宋大使の談話で「日本政府は解決済みの拉致問題を復活させている」と非難したことも、このような脈絡から出たものだ。

核とミサイル問題も、双方にとって見方が食い違う。北朝鮮は北朝鮮への圧力と制裁のために、日本が北朝鮮の核ミサイル問題をむやみに取り上げようとしていると主張する。

これに対し日本は「日朝平壌宣言を基に、拉致と核ミサイル問題など懸案を包括的に扱い、不幸な過去を清算し、国交正常化を推進するというのが日本政府の方針」(2022年9月16日、松野官房長官)という原則論を繰り返した。

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