北朝鮮大使の談話は日朝関係改善のシグナルか 日朝平壌宣言から20年、日本に好感持つ金正恩

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興味深いのは、金総書記が日本に向ける視線が中立的である、さらには友好的であるのではないか、ということだ。金総書記が直接、トヨタ自動車の「レクサスSUV」を運転する様子が北朝鮮のテレビで流れたが、これこそ日本への中立・友好的な考えを示す代表例だ。

父親の故・金正日総書記の時代には、日本の中古自動車の搬入と運行を禁止するなど「金正日は反日だ」と分析できる部分があった。ところが金正恩政権になってからは、そのような姿勢や政策が明るみになったことはない。これは、金総書記の生母である高英姫氏が大阪出身で、帰国事業で帰国した在日朝鮮人ということと関係があるように見える。幼いときから母親の影響により、日本への好感を持つ契機があったと推測することも可能だ。

金総書記が日本人料理人の藤本健二氏との親交を維持し、平壌に呼んで歓待したことも、彼の対日感情がそれほど悪くないことを示唆している。

日朝関係に画期的な変化も

もちろん、子どものときの個人的経験や人との縁が政策を左右するとは断言できない。だが、北朝鮮体制の特性を考えると、金正恩の対日認識が重大な影響を与える可能性を否定できない。

2022年9月16日、北朝鮮外務省で日本通として知られる宋日昊大使の名義で談話を発表したことにも、十分に注目すべき必要がある。宋大使は2006年1月、日朝正常化交渉の担当大使であり、2014年には日本と北朝鮮両国政府間での交渉でも北朝鮮側団長を務めた。

平壌宣言から20年、日朝間の合意がきちんと履行されていない責任を日本側に押しつけて誹謗するためだけであれば、外務省やその傘下にある日本研究所、または日本担当者の名義にするだけで十分だ。

そうではなく、交渉の脈絡をきちんと理解し、今後も日本との交渉を担当するであろう人物を談話の主体としたことは、北朝鮮の意中が込められているのではないか。宋大使が2017年に訪朝した日本人に「元帥(金正恩)の指導で日朝関係は画期的な変化を迎えるだろう」と言及したことも、改めて注目されている。

韓国・西江大学のキム・ヨンス名誉教授は「金正恩が2022年9月8日の最高人民会議での演説で、『資本主義の国とも多方面的な交流と協力を発展させいくための外交戦を模索せよ』と強調したが、これも日本を念頭に置いた布石だと見られる」と指摘する。

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