仲間を解剖した人間へ抗議?アザラシの凄い行動 アザラシが亡くなった翌日に起きた不思議な事

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めめちゃんは、たくみくんが亡くなった時、アザラシペンの中で生活していた。解剖時、個室の前には目隠しのスノコを立てていたのだが、もともと好奇心旺盛なめめちゃんは、スノコの隙間から解剖の様子を見ていたのだろう。解剖から約8か月間、執刀していた私のことをめめちゃんは避け続けた。

また、めめちゃんは体重計に乗ることも嫌がった。たくみくんの亡骸の一部を体重計に乗せているところを見ていたのかもしれない。めめちゃんも、今でもときどき、私のことを避けたり、体重計を嫌がったりする。たくみくんが亡くなって2年後の同じ時期に、思い出したように体重計に乗るのを嫌がったこともある。

このことがあってからは、他のアザラシから解剖の様子が見えないように配慮し、解剖はできるだけ個室のプールの中で行うようにしている。

久しぶりに海くんが餌を食べてくれた!

海くんが私を避けている時、あることに気づいた。海くんは、私が呼んでもプールから上がってこない時でも、他の飼育員が呼ぶと上がってくる。それならばと、他の飼育員に声を担当してもらい、私は一切声を出さずに、他の飼育員の声に合わせて海くんに餌を与えてみた。

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すると、海くんは私とは目を合わせないものの、久しぶりに私の手から餌の魚を食べた。大進歩だった。この方法で少しずつリハビリを行い、海くんの信用を取り戻せるよう努めた。徐々に目を合わせるようになり、プールから呼ぶ時だけは他の飼育員に呼んでもらい、広場に出てからは私が声を出して給餌しても餌を食べるようになった。

この一件で、アザラシが飼育員を見分ける際に、声を重要視していることがわかった。ちなみに、海くん以外のアザラシが飼育員を選り好みして餌を食べなくなった時にも、この方法で餌を食べさせることに成功している。彼らなりの考えや、思うところがあるのだろう。アザラシは本当に頭が良くて面白い生き物だ。

岡崎 雅子 元アザラシ飼育員

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おかざき まさこ / Masako Okazaki

1986年、神奈川県生まれ。水瓶座のAB型。日本大学 生物資源科学部 獣医学科卒業。幼少期からのアザラシ好きが高じて、北海道紋別市にあるアザラシ専門の保護施設「オホーツクとっかりセンター」で念願の飼育員になる。10年間の飼育員生活のなかで出会ったアザラシは69頭以上、そのうち38頭の保護に携わる。アザラシが前肢で顔をぬぐう仕草が好き(ぎりぎり顔に届くくらいの短い前肢が愛おしい)。好きなアザラシの部位は顔(表情がとても豊か)と、脇の下(柔らかくて触り心地が最高。脇の下をフニフニしている時に、その手を前肢でギュッと握られるのが至福)。著書に『寝ても覚めてもアザラシ救助隊』(実業之日本社)がある。

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