英国王室が「手数料資本主義」の象徴である理由 「密輸」「タックスヘイブン」「王室属領」の帝国

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たとえば現在の代表的タックスヘイブンであるケイマン諸島やイギリス領ヴァージン諸島(BVI)に、「諸島」という名称がついていることからも推察されるように、小さな島々の集まりである。ケイマン諸島最大の島であるグランド・ケイマン島でさえ、196.84km²にすぎない。BVIの総面積は、たった153 km²である。比較対象として淡路島をあげると、その面積は592.2 km²である。

18世紀のカリブ海諸島は、砂糖の生産地として知られた。砂糖は、18世紀ヨーロッパで最大の利益をもたらした砂糖は、小さな島々ではなかなか生産できなかった。推測の域を出ないのは残念であるが、それらの島々の少なくとも一部は、密輸基地として機能していたことは間違いない。

すなわち、カリブ海諸島の小さな島々は、租税回避行動を、密輸からタックスヘイブンへと変化させたのである。

王室属領とタックスヘイブン

現在のケイマン諸島とBVIの君主は、チャールズ3世である。むろん、その前の君主はエリザベス2世であった。これらは、王室属領である。

王室属領とは、「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国」(The United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland)には含まれず、イギリスの国王(the Crown)に属し、高度な自治権をもった地域のことである。内政に関してはイギリス議会の支配を受けず、独自の議会と政府をもっており、しかも、海外領土や植民地と異なり高度の自治権を有しているのだ。EUにも加盟していない。そのためイギリスの法律や税制だけではなく、EUの共通政策さえ適用されないのである。ただし、外交及び国防に関してはイギリス政府に委任しており、主権国家とはいえない。

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