英国王室が「手数料資本主義」の象徴である理由 「密輸」「タックスヘイブン」「王室属領」の帝国

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それらは、伝統的に国王が王国外に有していた領地である。イギリス周辺ではチャンネル諸島(イギリス海峡)の一部とマン島(アイリッシュ海)が王室属領であるが、じつはこれらの地域は近世には密輸基地として知られていた。しかも現在では、タックスヘイブンとしても知られる地域もある。

たとえばチャネル諸島に位置するガーンジー島のみならず、マン島は、しばしばタックスヘイブンであるとされる。すなわち、イギリスの王室属領は、密輸とタックスヘイブンと大きく関係しているのである。ここから、イギリスという国、イギリス王室、さらに大英帝国は、王室属領を利用して巧みに租税回避行動を促進したとことが示唆されるのである。

したたかなイギリスのタックスヘイブン優遇政策

イギリスとタックスヘイブンの関係が非常に強いということは、以下の文章からも明らかであろう。

モサック・フォセンカカンパニー[タックスヘイブンの実態を暴露した「パナマ文書」を流失させた会社]がペーパーカンパニーを作った主な場所ですが、世界の21の国・地域に及んでいます。約半分は英領ヴァージン諸島で作られており、次いでパナマ、セーシェル、ニウエ、サモアの順になっています。その多くがイギリスの海外領土や旧植民地などで、イギリスの影響力の強い地域なのです。(合田寛著『これでわかるタックスヘイブン――巨大企業・富裕者の<税逃れ>をやめさせろ!』合同出版、2016年、17頁)

イギリスは世界各地に植民地をもっていたのだから、タックスヘイブンに該当する地域が多くても驚くにはあたらないのかもしれない。また、19世紀末から20世紀初頭にかけて、イギリスは世界最大の金融網を有し、世界の貿易の決済がイギリス製の電信を使用してロンドンでおこなわれていたのだから、大英帝国とは、金融の帝国であったことは疑いの余地のない事実なのだ。

そのシステムが、現在もまだ生きているといえよう。

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