日本銀行の黒田東彦総裁は22日の金融政策決定会合後の記者会見で、賃金と物価の安定的・持続的な上昇の実現に向けて「当面金利を引き上げるようなことはない」と話した。日米金利差を背景に円安が進む中でも大規模な緩和策を継続する方針を改めて示した。
金融政策のフォワードガイダンス(指針)の変更も「当面は必要とは考えていない」と説明。「当面」の期間については数カ月ではなく「2、3年」と述べた。経済物価情勢に合わせ「微調整」はあり得るとしたが、変更は「経済物価情勢の転換によって、金融緩和政策を修正していくというような時点で考えられることだ」と話した。
感染症の影響が落ち着く中で、それを前提した政策指針を今回の会合で維持した理由については、「感染症の抑制と経済活動の両立は進んでいるが、依然として影響があり、先行きも下振れ要因として注意が必要だ」と語った。
マイナス金利については「大きな副作用や問題を引き起こしてない」とし、欧州がやめたとしても「日本がやめる必要はない」と主張。欧米が高インフレの抑制に利上げを加速させる一方、日本の消費者物価(生鮮食品を除くコアCPI)は来年度にも2%を割り込む可能性が大きいとし、「物価状況が違う下で金融政策が異なるのは当然だ」との認識を示した。
足元のコアCPIは「確かに高く、年内はさらに上昇する可能性がある」とし、7月の経済・物価情勢の展望(展望リポート)で示した見通しから上振れることも「十分にある」と指摘した。輸入物価が中心の物価上昇の中では、日銀が目指す賃金と物価が共に上昇する好循環の実現は「このままでは来年もならず、再来年もなかなか難しい」と語った。
黒田総裁の発言を受け、東京外国為替市場では円が対ドルで1%超下落し、1ドル=145円90銭を付けた。その後政府・日銀が24年ぶりの円買い・ドル売り介入を実施、円は一時140円台まで急反発した。
会合では長短金利操作付き量的・質的金融緩和政策の継続を決めた。市場が注目していた金融政策のフォワードガイダンスも利下げ余地(緩和バイアス)を含めて維持した。
他の発言
- 円安進行は先行き不確実性を高め日本経済にマイナス
- 2%物価目標の安定的持続に必要な時点まで現行緩和継続
- 必要があればちゅうちょなく追加的な金融緩和措置を講じる
- 長期金利変動幅の拡大、緩和効果を阻害なら目的実現できず
- 国債購入はあくまでも金融政策目的であり財政ファイナンスではない
- 政策金利は現在の長短金利水準または下回る水準で推移想定
- 企業収益は高水準、来年の春闘が賃金上昇もたらすと期待
政策運営方針
- 日銀当座預金のうち政策金利残高にマイナス0.1%の金利を適用
- 長期金利がゼロ%程度で推移するよう上限を設けず必要な額の長期国債を買い入れ
- 明らかに応札が見込まれない場合を除き、長期金利について0.25%の利回りでの指し値オペを毎営業日、実施する
- ETFとJ-REITはそれぞれ年間約12兆円、約1800億円に相当する残高増加ペースを上限に必要に応じ買い入れ
- CPや社債などは感染症拡大前と同程度のペースで買い入れを行い、買い入れ残高を感染症拡大前の水準(CP等:約2兆円、社債等:約3兆円)へと徐々に戻していく
(発言を追加して更新しました)
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著者:伊藤純夫、藤岡徹
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