和田秀樹「老いとは同世代に障害者が増えること」 体が不自由でも周囲に頼って人生を楽しんでいい
それでもまだいくつかの楽しみは残されているし、それを楽しむ機能も残されています。たとえば歩けなくなっても食べる楽しみだけは持ち続けたいとか、風景を眺めたり、演劇や好きな本を読む時間は失いたくないといったことです。
その楽しみまで、好きなレストランや劇場に行けないとか旅行に出られないというだけの理由で自分から放棄すればどうなるでしょうか。
何もかも諦めて、家に閉じこもるだけの暮らしになってしまいます。これでは身体の障害だけでなく、心まで鬱屈としてきますね。何の楽しみもない高齢期を過ごすしかありません。
でも「自分の楽しみのため」と割り切って利用できるものは利用し、ときには妻や夫の手を借りてもやりたいことをやってみるというのは、朗らかな高齢期を過ごすためにも大切な心構えになってくるはずです。
「まだ元気な人もいるのに、自分だけが他人の世話になるのは情けない」
ともすればそんな気持ちになる高齢者もいます。とくに男性にはどんなに老いても一片のプライドや意地が残されているものです。
でも、早いか遅いかの違いだけなのです。いつかはみんな動けなくなってしまいます。
「お先に世話になるよ」
それくらいの軽い気持ちで、自分の楽しみを諦めないようにしてください。
同世代の老いを大きな気持ちで受け止めよう
50代60代のころでしたら、認知症が始まった高齢者や急に老け込んでしまった職場のOBを見ると、「ああはなりたくないな」とか「気をつけなくちゃ」と思うものです。
そして自分が無事に70歳を迎えると、「なんてことないな」と思います。
「たしかに疲れやすくなっているけど、老いの実感なんてない。70歳なんてこんなものか」
と安心したり拍子抜けしたりします。「まだまだ大丈夫だな」と思ってしまうのです。
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