政府のコロナ対応、経済学者との知られざる対話 政策に都合のいい提言や分析は求められなかった

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――政策現場の方々からは、より具体的に「どうすべきか」についての意見を求められたりはしなかったのでしょうか。

藤井:私たちがそういう要望をいただくことはありませんでした。4月に東京都の小池百合子都知事たちに説明したときは、大阪での変異株(アルファ株)拡大を警戒して県境をまたいだ移動を自粛すべきというメッセージを発したい意図はあったようですが、同様に私たちがこのとき示した分析でも関西の一部地域とその他の地域の往来は自粛・制限して、関東での変異株割合の上昇をできるだけ遅らせることが感染被害と経済被害の両方の視点から望ましいという結果を示していたので、それが東京都のニーズにもマッチしていたということはあるかもしれません。

しかし、行政や政治家の方々から「こういう政策を考えているので、それにあった見通しはないか」とか、「もっとはっきり提言してほしい」といった要望をいただいたことはありません。

ワクチン1日100万本の達成は不可能と見ていた

――政策現場が進めたいと考えている方向をサポートするような見通しや分析結果がないか問われることもありうるのではないかと想像していたのですが、それはなかったということですね。

藤井:はい。そういう方向でのリクエストはまったくありませんでした。

仲田:内閣官房コロナ室からは、ワクチン接種推進をふまえたシミュレーションの設定の中で、私たちが提示していた最も楽観的な仮定よりもさらに楽観的な想定のもとでの分析結果を見せてほしいというリクエストをいただいたことはありましたが、それも今振り返れば現実的な想定の範囲内だったと思います。

藤井:2021年5月上旬の段階で私たちがシミュレーションの「基本見通し」で想定していたのは、1日約50万本程度の接種数でした。5月8日に菅義偉首相(当時)に説明した際にもその当時官邸が目標として掲げていた1日約100万本の想定に基づくシミュレーションは「希望見通し」として示していたにすぎません。

私たちとしては、当時は「1日当たり100万本」等という目標はとても達成できないのではないかと考えていたのですが、実際にフタを開けてみたら1日100万本以上のペースで接種が進んだわけです。ですから、政府の方々は当初からこの目標は達成できると見込んで動いていたのではないでしょうか。もちろん、自治体や医療関係者等、現場の頑張りもすごかったのだと思いますが。

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