仲田:6月中旬頃には「7月に1日120万本・140万本」といった仮定を置いた場合のシミュレーションをご依頼いただいたことがあったのですが、その時点では正直そのようなワクチン接種の想定が実現可能だと考えてはいませんでした。しかし現実には、7月には1日120万本を安定的に超え、1日160万本を超える日もあったので、政府は現実的なワクチン接種見通しを試算できていたということになります。
分科会メンバーにも資料回覧
――政策現場としては、あくまでも見通しや参考情報として、客観的かつ現実的なものを求めていたということなのですね。
藤井:はい。菅首相に2度目に面会した6月20日は、ちょうど第2弾の五輪分析を公表した直後のタイミングでした。しかし、官邸からは五輪分析ではなく、通常の感染状況と経済被害に関する見通しを説明してほしいというリクエストをいただきました 。
仲田:官邸では五輪分析についてはまったく触れず、「ワクチンの感染および重症化予防効果、デルタ株の感染力と置き換わりの推移の仮定が、今後の感染と経済の見通しにどのような影響を与えるか」について、かなり細かく説明させていただきました
(当日の説明の要点は図参照、外部配信先では図などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)
2回目の官邸訪問の前には、尾身茂先生・脇田隆字先生をはじめとした分科会メンバー数名に資料を回覧し、変なことを言っていないか、他に伝えるべきことはあるか等を確認してから臨みました。また、資料にはアドバイザリーボードに提出された見通しや、みずほリサーチ&テクノロジーズのエコノミストである酒井才介さん・服部直樹さんの見通しを紹介するページも追加して、官邸では彼らの分析内容についても簡潔に説明しました。
その当時は感染症専門家と官邸がうまくコミュニケーションをとれていない印象を持っていたので、自分たちの分析を説明するだけではなく、特にアドバイザリーボードで提示されている見通しにも言及することで、感染症専門家の知見を官邸に届けるお手伝いができればと考えていました。