政府のコロナ対応、経済学者との知られざる対話 政策に都合のいい提言や分析は求められなかった

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――首相をはじめ、政策決定に携わる非常に忙しい方々に分析を届ける際には、特にどんな点に留意しているのでしょうか。

仲田:最も重要なのは、読みやすい資料を作成し、専門用語を多用せずにわかりやすく説明することです。

政治家、特に首相や閣僚の方々等は多岐にわたる課題に直面しています。安全保障の問題もあるし、環境問題や教育行政の問題、その他、非常に多くの重要な問題を抱えています。コロナ対策が重要であることは間違いありませんが、たくさんある課題のうちの一つです。さらに、選挙関連の活動等にも取り組む必要があるでしょうし、とにかく時間がありません。そういう方々にプレゼンテーションをする場合は、短い時間でどれだけ要点を伝えられるかが勝負です。そして、そのとき示したメッセージのうち、何か一つでも頭の中に残すことができれば十分、という感じではないでしょうか。

また、話を聞いてくださっている方の動作や表情を見ながら、そのときどう感じているか、何を知りたがっているかを感じ取り、説明の仕方やペースを調整していくことも大切です。たとえば、「西村大臣(西村康稔経済再生担当大臣・当時)はもう手元の資料をめくっていて次のトピックに行きたがっているな」といったところまで気を配りつつプレゼンテーションできなければ、うまくコミュニケーションをとれているとは言えないと思います。

一国の首相に「10分でもいただければありがたい」

――菅首相との面会も、1回目は30分、2回目は1時間と、短い時間だったと思います。

仲田:一国の首相に一研究者が30分も時間をいただけたとしたら、それは非常に長い時間だと理解すべきだと思います。「10分でもいただければありがたい」という世界です。 

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与えられた30分の間で、見通しと政策インプリケーションの要点を簡潔に説明し、質問に答える。そのためには、研究発表セミナーや大学の授業での発表に向けた準備とはまったく異なる準備が必要です。セミナーや授業等で説明する場合は、同業の研究者や学生が聴衆ですから、こちらの話について時間をかけて考えてくれることを期待できますし、特に授業の場合は学生の予習・復習も前提として解説することもできます。

しかし、行政や政治家の方々にお伝えしようと思ったら、こちらとしては割り当てられた時間の中で、先方にとっては初めて聞くかもしれない内容を理解していただかなければなりません。そのため、どうすれば短時間で要点をご理解いただけるかを考える必要があります。

(10月5日配信予定の第3回に続く)

仲田 泰祐 東京大学大学院経済学研究科 准教授

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なかた たいすけ / Taisuke Nakata

米連邦準備理事会(FRB)の主任エコノミストを務めた金融政策とマクロ経済のプロフェッショナル。2020年に日本に活動拠点を移した後、新型コロナの感染と経済影響に関する試算で注目を集める。1980年生まれ、2003年シカゴ大学経済学部卒業。カンザスシティ連銀調査部からキャリアを始め、12年にニューヨーク大博士(経済学)。「社会に役立つ分析」を掲げる実践派経済学者の代表選手。

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藤井 大輔 東京大学大学院経済学研究科特任講師
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