経済成長と環境の両立に「出生率低下」が重要な訳 ノーベル経済学賞候補とされる米大学教授が解説

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事実、人口転換(社会が近代化する過程で、多産多死から、多産少死を経て、最終的に少産少死へと転換する現象)が始まって以降、出生率が低下したおかげで、急激な人口増加が環境にかける負荷が減ってきている。

したがって、産業革命が現在に至る地球温暖化の引き金を引いたのに対して、同時に始まった人口転換はおそらく産業革命の影響を緩和する働きをし、経済成長と環境維持の将来のトレードオフを軽減するだろう。

基本的には、いっそうの環境悪化を緩和して「崩壊」の可能性を減らしつつ経済成長を維持するには、私たちを現在の窮地に追いやったのと同じ、重要な要因のいくつかがカギになる。

出生率の低下で必要な技術開発の時間稼ぎができる

例えば、技術革新は化石燃料への依存から環境に優しい技術への移行を促し、出生率の低下は人口が環境にかける負荷を軽くし、さらなる経済成長を生み出す。アメリカの科学技術者で、ビジネスリーダーであり慈善家でもあるビル・ゲイツは、こう述べている。

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「私たちは今後10年間、温室効果ガスの排出を2050年までになくすようにするための技術や政策、市場構造の創出に重点的に取り組むべきだ」

そうした政策や構造のなかには、全世界での男女平等や教育の機会拡大や避妊法の普及を促進し、世界中の出生率の低下につながるものがなければならない。それらによって現在の地球温暖化傾向が緩和され、この闘いの流れを変えるのに必要な技術を開発する貴重な時間稼ぎができるだろう。

こうした人口対策が公式に推奨されれば、大半の発展途上国では、従来の気候政策提言よりも大きな政治的支持が得られるかもしれない。クリーンエネルギー技術や環境規制の導入は管理や実施に費用がかかるが、出生率の低下につながる政策は環境を維持しつつ経済成長するという恩恵をもたらすからだ。

もし私たちが気を緩めずに適切な資源を投入することができれば、進歩の時代に華々しく解き放たれた人類の驚くべき技術革新力は、出生率の低下と相まって――それらはどちらも人的資本の形成によって促進される――これから必要になる画期的技術の時宜に適った発展を可能にし、今後の数世紀で、この気候危機を薄れゆく記憶に変えるはずだ。

オデッド・ガロー ブラウン大学経済学教授

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Oded Galor

ルーヴァン・カトリック大学およびポズナン経済大学から名誉博士号を授与される。アカデミア・ユーロペアの外国人会員(名誉会員)。計量経済学会の選出フェロー。「経済成長ジャーナル」の編集長を務める。「統一成長理論」の創始者。

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