経済成長と環境の両立に「出生率低下」が重要な訳 ノーベル経済学賞候補とされる米大学教授が解説

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爆発的に増える人口を地球が支えきれず、大規模な飢餓が起こるだろうという以前の予想は、緑の革命のあいだに食糧供給が飛躍的に増え、人口の増加が緩やかに鈍化して、おおむね覆された。

そうはいうものの、過去200年で世界人口が7倍に急増し、1人当たりの所得が14倍に跳ね上がったせいで、世界中の消費が劇的に増え、これが環境悪化を促す大きな要因になってきた。

私たちが慣れ親しんできたような人類の旅はもう続けられないのではないかと懸念する人々もいる。持続可能なエネルギー源への移行がはかどらず、環境に優しくない製品の生産も続いているために、環境災害を避けるには経済成長を減速させる必要があるという見方が強まっている。

人口増加による炭素排出量は非常に多い

経済成長は、地球の自然環境の維持と本当に両立できないのだろうか? 私たちは、そのどちらかを選ばねばならないのか?

必ずしもそうとは限らない。国際比較分析からは、次のことがわかる。

人口の増加は炭素排出量の増加につながるが、その排出量増加分は、人口を増やす代わりにその分だけ物の豊かさを増したときの炭素排出量の増加分よりも一桁多い。

つまり、人口が5000万人で1人当たりの所得が1万ドルの地域は、人口が1000万人で1人当たりの所得が5万ドルの地域に比べて、総所得はまったく同じであるのに、炭素排出量がはるかに多いということだ。

したがって、出生率の低下によって促進される経済成長――生産年齢人口の相対的規模の増加による経済成長(経済学の世界では「人口ボーナス」と呼ばれている)――は、炭素排出量の予測水準を大幅に減少させうることになる。

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