経済成長と環境の両立に「出生率低下」が重要な訳 ノーベル経済学賞候補とされる米大学教授が解説
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気候変動問題が深刻化する中、経済成長と環境維持の両立は人類の大きな課題となっています。ただ、それは本当に両立可能なのでしょうか。ノーベル賞候補とされるブラウン大学のオデッド・ガロー教授は「出生率の低下を伴う技術革新には、経済成長と環境維持のトレードオフを軽減する可能性をもともと秘めているかもしれない」と指摘します。
「環境に優しい技術の開発とそれへの移行とともに、教育から得られる利益の増加と男女平等の推進によって人口の増加率が落ち、環境への負荷が軽くなれば、今まさに進行している地球温暖化を軽減しつつ、経済成長を持続することもできるかもしれない。そうなれば、現在の地球温暖化の傾向を逆転させるのに欠かせない新しい画期的な技術を開発する貴重な時間が得られる」というのです。
ガロー氏がそう主張するに至った分析について解説します。
※本稿はガロー氏の著書『格差の起源 なぜ人類は繁栄し、不平等が生まれたのか』から一部抜粋・再構成したものです。
環境汚染の端緒となった産業革命
産業革命は、人類が環境に憂慮すべき影響をもたらす発端となった。産業革命の初期以降、主要な工業都市では環境汚染がすさまじい勢いで進み、それが、私たちが今直面している気候危機につながった。
とくに、化石燃料の燃焼は大気中の温室効果ガスの濃度を上昇させ、地球温暖化を促進した。
これから数十年にわたってこのまま地球全体の気温が上がれば、環境は大きく変化し、さまざまな動植物が絶滅に追いやられ、地球上の生態系の複雑なバランスが崩れることが予想される。さらに、今後見込まれる海面上昇によって、何千万もの人が住みかを追われ、世界の食糧供給に影響が出て、甚大な経済的損害と苦難を引き起こすと考えられている。
こうした傾向は、環境規制と、太陽や風力のエネルギーの活用や、リサイクル、廃棄物の管理、汚水処理といった、環境を維持できる技術を徐々に導入することで、ある程度は緩和されてきたが、人類による地球の汚染は依然として警戒せざるをえない。
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