度重なる「バス置き去り事件」防ぐ手段はあるか 「スクールバス用警報ブザー」を個人が発案

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要は、「しっかり確認しましょう」としか読めません。ミスをした場合はどうすればいいのか、ミスを防止するための科学的な視点がないのです。最もマズい点は、通達は出すが、それを実行する現場への費用(装置設置)や人件費などの支弁をしていないのです。

このようなことが起こるとこぞって評論家や福祉の中抜きのようなことをしている実践家が「海外では~」となります。海外の良いところだけ見て主張する方が多いのですが、法制度も文化も違いますし、専門的な国際比較の視点がないと鵜呑みにできません。

個人がスクールバス用警報ブザーを開発

このような中、ともに厚労省の参与としてコロナ対策に関わり斬新なアイデアでシステムを構築し、また神奈川県のコロナ対策の統括官でもある畑中洋亮さんが、1人の親としての立場から、スクールバス用警報ブザーを発案しました

畑中さんが発案した発光ランプスイッチ。クラクションの配線につなぎ、バス後方に設定する(写真:畑中さん提供)

畑中さんは、このような装置が迅速に作れ、バスに簡単につけることが可能であることを実証しました。予算さえあれば自治体どころか園規模でも独自に導入可能です。しかし先進国で最も子どもに資源導入しないわが国の福祉の現場の金のなさを見ると、難しいかもしれません。国の支援が待たれます。

コロナの件もそうでしたが、実際に問題や課題が起きると、「海外では~」「署名!」などと必死に格闘している現場や研究者を批判をする人が多いのが現状です。「であなたは何ができるのですか? 目の前でやってください」と言うと何もできないのです。

批判するだけの評論家ではなく、問題があれば自分で解決モデルを提示することが福祉政策でも重要です。モデルを提示し、検証する。これからは理系・データサイエンスの考えが福祉政策でも中心になっていくでしょう。

和田 一郎 獨協大学国際教養学部教授

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わだ いちろう / Ichiro Wada

筑波大学大学院人間総合科学研究科(社会精神保健学)修了。博士(ヒューマン・ケア科学)。専門はデータサイエンス。社会福祉士、精神保健福祉士。人口減少社会における公共サービスの在り方、行政DXの活用や震災・疫病などの危機時における子ども等の弱者の支援におけるデータサイエンスの活用 などを研究している。

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