度重なる「バス置き去り事件」防ぐ手段はあるか 「スクールバス用警報ブザー」を個人が発案

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人は忘れるしミスをするという前提はとても重要です。市役所に電話するような人は自分を棚に上げているのですが、私たちは毎日ミスをし続けています。人はミスをするのでそれを前提として社会が回るのが寛容な社会です。

しかし今回の事件が起こった理由としては、市役所の苦情の中にあるような「子どもをバスに置いていくなんて、ちゃんと確認すれば起こらないだろう」という性善説の思い込みです。具体的には下記のように性善説でシステムが動いていました。

1. 窓ガラスが完全に中が見えないようにしてしまった(子どもが中に取り残されるなんてないだろうから、プライバシーを優先させた)

2. スクールバスの運転手資格・年齢条件がないため訓練されていない人でも運転できる(マニュアルを守れば事故が起こるはずないので、救急、安全、セキュリティなどの知識が運転手になくてもよいだろう)

3. 思い込みヒューマンエラーを防ぐ装置を用意しなかった(国の通達や市町村の指導をしっかり守れば、子どもを置き去りにすることなんてないだろうから、必要ない)

性善説及び規制緩和の名のもとに、結果的に、幼稚園・保育関連が安全や子どものケアなどの専門性を軽視した政策となりました。児童福祉領域において、専門性を否定し、誰でもできるようになることを「棄民政策」というのですが、その結果の1つと言えます。

国も性善説に基づいています。昨年度の福岡県中間市の死亡事例をもとに厚生労働省及び文部科学省、内閣府は連名で2021年8月25日、通達「保育所、幼稚園、認定こども園及び特別支援学校幼稚部における安全管理の徹底について」を出しました 。

 ③送迎バスを運行する場合においては、事故防止に努める観点から、
 ・運転を担当する職員の他に子どもの対応ができる職員の同乗を求めることが望ましいこと
 ・子どもの乗車時及び降車時に座席や人数の確認を実施し、その内容を職員間で共有すること
 等に留意いただくこと。
(一部抜粋)
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