前述の出生動向基本調査での「恋人がいる率」に関しては、識者によっては「2005年から比べれば下がり続けており、草食化は事実である」と主張する人もいます。確かに、20代男性のデータを見てみると、2005年31%に対して、2015年は24%ですから下がっていると言えばそのとおりです。
しかし、長期推移でみれば、2005年は最大値を記録した年であり、1987年は26%、1982年は24%と2015年と大差ありません。「上がった」「下がった」と言ったところで、しょせん私の言う「恋愛強者3割の法則」の範囲内での上下であって、大騒ぎするレベルの話でもありません。むしろ、2005年以降の推移だけを取り出して、「ほら、下がっているでしょ」という切り取り方のほうこそ恣意的なものを感じます。
景気の良しあしは恋愛に関係しない?
むしろ注目すべきはそんな些細な部分ではなく、世の中がバブル景気で浮かれ、恋愛至上主義時代と呼ばれた1980年代と30年も給料があがらないデフレ不況のど真ん中であった2015年とで「恋人がいる率」が同じであることの不思議さです。であれば、若者の恋愛に景気の良しあしは関係ないのかもしれないという仮説すら立ちます。
しかも、何より1980年代まではなんだかんだ言って皆婚時代でした。人口動態調査から20代での男性の初婚数は、1985年には年間41万4997組もあったのに対して、2015年は20万5894組とほぼ半減です。
20代未婚の人口が減っているからだという指摘があるかもしれませんが、20代男性未婚人口は1985年の約622万人から2015年には約498万人へと減っているものの、その減少幅は2割弱にとどまります。人口減少分以上に婚姻が減っていることは明らかでしょう。
「恋人がいる率」が変わらないのに、なぜ婚姻率は激減しているのか。そこを突き詰めることのほうが重要で、それをなんでもかんでも「若者が草食化したからだ」と安易に片づけてしまうほうが無責任だと思うわけです。
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