円安は消費者物価をどのくらい押し上げているか 日本の消費者物価の変動要因を分解してみた

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最後に、今回のコラムの目的である、CPIコアに占める「為替要因」の影響の大きさを考える。第1主成分は「輸入物価(円建て)要因」であるため、これを「輸入物価(現地通貨建て)要因」と「為替要因」に分ける。また、第2主成分も「為替要因」であるため、これらを組み合わせることで、CPIコア全体に対する「為替要因」と「輸入物価(現地通貨建て)要因」を比較することができるようになる。

他の要因(主成分CPIコア、GoToトラベルと通信料(携帯電話)の要因)も合わせて4つの要因がCPIコアに与える影響を比較すると、図のようになる。

CPIコアの上昇に占める「為替要因」は22.3%

足元の上昇要因の全体に占める割合は、①主成分コアCPIが38.3%、②輸入物価要因(現地通貨建て)が39.3%、③為替要因が22.3%である。④GoToトラベル・通信料要因は下落方向の寄与となった。

まだ「為替要因」が主因とはいえないが、寄与度は徐々に大きくなり、無視できないレベルになっている。

むろん、為替は相手通貨の状況も影響するため、政策対応で解決できるとはかぎらない。特に、足元ではアメリカの強力な金融引き締め(利上げ)がドル高円安の主因であり、日銀が多少利上げをしたところで、日米の金利差に与える影響は限定的で、ドル買い・円売りの投機的な動きは止まらないだろう。今回の分析でわかった消費者の負担増を上回るだけの円安メリットを日本経済全体として享受する政策が重要だろう。

末廣 徹 大和証券 チーフエコノミスト

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すえひろ とおる / Toru Suehiro

2009年にみずほ証券に入社し、債券ストラテジストや債券ディーラー、エコノミスト業務に従事。2020年12月に大和証券に移籍、エクイティ調査部所属。マクロ経済指標の計量分析や市場分析、将来予測に関する定量分析に強み。債券と株式の両方で分析経験。民間エコノミスト約40名が参画する経済予測「ESPフォーキャスト調査」で2019年度、2021年度の優秀フォーキャスターに選出。

2007年立教大学理学部卒業。2009年東京大学大学院理学系研究科物理学専攻修了(理学修士)。2014年一橋大学大学院国際企業戦略研究科金融戦略・経営財務コース修了(MBA)。2023年法政大学大学院経済学研究科経済学専攻博士後期課程修了(経済学博士)。

 

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