急に親の財産を相続した人が迫られる対処の主眼 後で苦労しないよう、元気なうちに聞いておこう

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第三者に貸し出す「賃貸」を選択する場合は、借り手を見つけるのが難しいケースもあることを知っておかなくてはなりません。また、当然、家の修繕費用などの維持管理費もかかるので、注意が必要です。マイホーム借り上げ制度の利用を検討しましょう。これは「一般社団法人移住・住みかえ支援機構」が運営している制度で、一定の条件を満たせば利用でき、空室が発生した場合も一定の賃料収入が保証されます。

「第三者に無償譲渡(贈与)」する場合は、当然売却価格がゼロになるため、早期に処分しやすくなります。また、譲渡するため、維持費や固定資産税もかかりません。

また、空き家の管理の手間からも解放されます。

「放置」すると「特定空家」に指定されることも

維持費や固定資産税がかかることや管理が煩雑であることから、「相続放棄」を選択する方もいらっしゃいます。その場合に気をつけなくてはならないのは、相続放棄は「不動産だけ」という指定ができず、他の財産まで放棄しなくてはならない点です。やはり親と相談し、財産がどれだけあるのか、事前に調べておくのが良いでしょう。

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最後に「放置」です。家は、築年数が数十年を超えると、倒壊する危険性があります。このような危険性が生じると、「特定空家」に指定されることがあります。また、空き家が周囲の景観を著しく損なうものである場合にも、「特定空家」に指定されることがあります。なお、家を建てた当時は景観を損ねなかったものの、周辺地域の開発により、今後、町の景観を損なう可能性が高いと判断された場合にも、指定がなされるおそれがあります。

「特定空家」に指定されると、固定資産税は6倍、都市計画税は3倍になります。滞納すると、罰金が科せられたり、行政代執行がなされて解体費用(100~200万円)を請求されたりすることもあります。こういったリスクがあるため、「放置」を選択するのはやめて、別の選択肢を考えておくのが賢明です。

老親の家(空き家)をどうするかの主な選択肢例
水上 克朗 ファイナンシャルプランナー

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みずかみ かつろう / Katsuro Mizukami

慶應義塾大学卒業後、大手金融機関に入社。会社生活を通じ、14回の部署異動、11回の転勤、11年間の単身赴任、2度の会社合併を経験。これまでのさまざまな経験をするなかで、ファイナンシャルプランナーの知識を活かし、老後1億円資産の捻出方法を確立する。現在、ライフプラン(住宅・教育・老後の3大資金)、資産運用、保険の加入・見直しなどの観点からアドバイスを行う。CFP認定者(日本FP協会)、1級ファイナンシャルプランニング技能士、DC(確定拠出年金)プランナー。著書に『50代から老後の2,000万円を貯める方法』(アチーブメント出版)がある。

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