米国政府、「高性能GPU」の対中輸出に新規制発動 「阿里雲」など中国のクラウドサービスに打撃も

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エヌビディアの高性能GPUは、中国のクラウドサービスのデータセンターにも大量導入されている(写真は同社の中国向けウェブサイトより)

アメリカ政府が、最先端の半導体の中国向け輸出に関する新たな規制を発動したことがわかった。

8月31日、アメリカのGPU(画像処理プロセッサー)大手のエヌビディアはアメリカ証券取引委員会(SEC)に提出した文書のなかで、アメリカ政府の新たな輸出規制措置により同社製の高性能GPUの中国およびロシア向け輸出が影響を受けると明らかにした。

具体的な対象製品は、エヌビディアのAI(人工知能)向けGPU「A100」と、まもなく出荷を開始する次世代GPU「H100」の2種類だ。さらに、エヌビディアが将来発売する製品に関しても、演算処理能力がA100と同等以上のGPUは同じく輸出規制の対象となる。

上述のエヌビディアの文書によれば、輸出規制の対象に高性能GPUを加えた理由について、アメリカ政府は「最終的に軍事用途に使われたり、軍事関連のユーザーの手に渡るリスクを予防するため」と説明している。エヌビディアはアメリカ政府の通知を8月26日に受領し、新規制はその時点から直ちに発効した。

AIの機械学習などに不可欠

同じくGPU大手のアメリカのAMD(アドバンスト・マイクロ・デバイセズ)も、アメリカ政府から同様の通知を受け取った。9月1日付のロイター通信の報道によれば、AMDのAI向けGPU「MI250」が対中輸出の規制対象に含まれることを、同社の広報担当者が認めた。

GPUはもともとコンピューター・グラフィックスの演算用プロセッサーとして発展したが、その高性能化とともに、近年は(AIの機械学習など)ビッグデータの超大規模演算に欠かせないデバイスとなった。クラウドサービスとして提供されているさまざまなAIアプリケーションには、データセンター側のサーバーに大量のGPUが導入されている。

エヌビディアのA100は、現在市販されているGPUのなかで最も高性能な製品の1つだ。同社は以前、A100の導入事例として阿里雲(アリババクラウド)、騰訊雲(テンセントクラウド)、百度智能雲(バイドゥAIクラウド)など、中国の複数のクラウドサービス・プロバイダーの名前を列挙していた。

本記事は「財新」の提供記事です

中国の顧客が輸出規制対象製品の購入を望む場合、エヌビディアはアメリカ政府に対して輸出許可を申請できる。しかし同社は、アメリカ政府の許可を取得できるかどうかや、(許可を得られる可能性があっても)適切なタイミングでそれを得られるかどうかは保証できないとしている。

(財新記者:翟少輝)
※原文の配信は9月1日

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