テレビ番組は「音」に注目するとより面白くなる訳 「タモリ倶楽部」の制作会社「ハウフルス」の流儀
東京のあらゆるスポットを扱った情報バラエティ「出没!!おもしろMAP」(テレビ朝日、1977~1979年)は、ハウフルスが制作会社として最初に手がけた番組であり、今日に続くハウフルス流の原点でもある。
「ひと言でいえば、菅原(会長)の遊び心ですよ」と、堀江氏は言う。ロケVTRを撮ってきて、編集して音を付けてという一連の作業を、楽しくやれればそれが視聴者にも伝わる。言い換えれば、音選びも“それっぽい音を付けといて”と、音効さんのセンスに丸投げするだけでは楽しくないといったところか。
例えば、魚の「カマ」を紹介するシーンで、カルチャークラブの『Karma Chameleon(邦題・カーマは気まぐれ)』の「♪カマカマカマカマ、カマカメレオーン」というサビのフレーズを使ったり……例を挙げればキリがないが、時にはミュージシャン名やバンド名のほうに掛けているケースもある。
しかも比較的メジャーな曲だけでなく、邦楽から洋楽、ポップスからワールドミュージックまで、実に幅広い音楽ジャンルから選ばれるので、かなりの音楽好きの人でも、正解にたどりつけないことも多い。
よく考えた末、何と掛けているのかがわかったときは、ちょっと嬉しくなったりする。
クスッと笑えるような選曲を楽しむ
「デメリットもあるんですよ。何に掛かっているか考え出すと、集中して番組を見られなくなりますからね」(佐藤氏)
そんなリスク(?)を承知で、ハウフルスのディレクターと音効さんは、時にクスッと笑えるような選曲を楽しんでいる。
「今は音効さんに選んでもらったサウンドデータをリモートでやりとりすることが多くなりましたが、以前はMAの現場に音効さんが山のようにCDを持ってきて、一曲ずつ聞いて選ぶといったやり方でした」(佐藤氏)
かつてのアナログな作業から、語呂合わせという手法が生まれ、ダジャレを徹底的に追求していった結果、「タモリ倶楽部」の名物コーナーである「空耳アワー」(現在休止中)や、「ボキャブラ」シリーズ(フジテレビ、1992~1999年)のような番組も生まれたのだろう。
今や、語呂合わせ選曲を取り入れる他番組も増えている。「モヤモヤさまぁ~ず2」「出川哲朗の充電させてもらえませんか?」(ともにテレビ東京)など、選曲の趣味や狙いは微妙に異なるものの、やはり“元祖”ハウフルス流の選曲は、圧倒的に楽しい。