テレビ番組は「音」に注目するとより面白くなる訳 「タモリ倶楽部」の制作会社「ハウフルス」の流儀

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ハウフルス流の音に対する姿勢を、堀江氏はこう表現する。

「恥ずかしい音というか、みっともない音は付けられないというのが根底にあります。オーディエンスの笑いや拍手をむやみやたらと付けないというのもあります」

映像に付ける効果音そしてBGMは通常「音効さん」と呼ばれる音響効果の専門家が選ぶが、担当ディレクターの趣味や狙いを反映したり、音効さんのセンスに任されたり、ケースバイケースではある。

「恥ずかしい音の定義はそれぞれだと思うんですが、僕の解釈では、今、世の中で流行っている曲はあえて選ばないということがあると思います。流行りの曲を使うのって、ちょっと照れるよねという。それよりも、例えば『あぁ、それ懐かしいね』とか、見ている人に刺さるような選曲をする傾向が強いですね」(佐藤氏)

流行りの曲を使うことはアイキャッチならぬ“イヤーキャッチ”になりそうなものだが、ハウフルス流の選曲は、あえてそれをしない。

「あくまでギャグとして付ける場合はありますが(笑)。例えば若い世代に刺さるように、今TikTokでバズっているような曲を付けるといった意図はわかりますし、そうしたいと考える制作者は少なくないと思いますが、ウチはやっぱり真逆かもしれないですね」(堀江氏)

芸人にたとえれば、ベタのわかりやすさを認識しつつもわが道を行く。佐藤氏の言う“それって照れるよね”という感覚、粋をモットーとする美意識がハウフルスらしさと言えるだろう。

語呂合わせ(ダジャレ)選曲の原点は「遊び心」

ハウフルス流音選びの真骨頂に、「語呂合わせ」による選曲という手法がある。例えば「タモリ倶楽部」で、タモリ自身が何かにチャレンジする際に流れるBGMはボブ・ディランの『Mr. Tambourine Man』の一節だ。

「♪ヘーイ、ミスター・タンブリングマン」の「タンブリン」の部分が「タモリ」と聞こえる(聞こえなくもない?)ので使われているわけだが、まさに語呂合わせ、つまりダジャレなのである。

「ダジャレですよね(笑)。あれはたぶん、『出没!!おもしろMAP』のころにもう始めていたと思います」(堀江氏)

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