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稲盛和夫「常に謙虚」貫いた偉大なる思想家の足跡 「経営の神様」はジェントルマンであり俗人だった

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稲盛氏は京都人を「いけず」だと思った(「いけず」は、標準語の「意地悪」とは微妙にニュアンスが異なるが、京都および関西圏で使われる独特の感情言語である)。

稲盛氏はこの世を去るまで、鹿児島弁のイントネーションが混じっていた。言葉に京都人は敏感である。ある料亭で会食をすませて出ようとしたとき、女将さんが玄関先で、「稲盛さんは、京都の方やおへんな(ないですね)。どこから出て来はったんですか」と聞いてきた。

「鹿児島です」

女将さんの表情が変わった。

「うちは、薩摩のせいで、えらい(大変な)目にあいました」

いつの時代の話かと思いたくなるが、京都の「中」ではありがちな会話である。そんな異文化の地で稲盛氏は根を下ろし、稲盛財団を創設し、京都版ノーベル賞とも言える国際賞の「京都賞」を創設。科学や技術、思想・芸術の分野に大きく貢献した人たちに贈っている。賞金額はノーベル賞よりも多い。筆者も招待されたが、ノーベル賞授賞式と遜色がない豪華絢爛な授賞式であり、ディナーであった。「外の人」が京都人以上の京都人になり、京都の都市ブランドを高めている好例である。

稲盛氏の人生から何を学び、創出するか

稲盛氏の死は、「経営の神様」の死として報道されている。その通りなのだが、稲盛氏の歴史的偉業は、それだけではない。今こそ「生き方」が問われている日本人にとって、再考しなくてはならない数々の哲学を提供してくれた。つまり、偉大なる「思想家の死」でもあるのだ。著書の『生き方』が中国で500万部も超えたという事実を見ると、ただの「外の人」ではなかったことは明白だ。

今後、日本の将来を考えた場合、日本人だけでなく、「外の人」のニーズはさらに増していくことだろう。人口減少の中で、地方創生、高付加価値の新産業創出、AI、DX人材の確保などが、焦眉の急である。「いけず」する人がいようが、稲盛氏のように「利他の精神」のもと、一企業に留まらず、地域、日本、さらには世界のために活躍してくれる優秀な「外の人」の活躍を見守っている京都に日本復活のヒントが隠されている。

稲盛氏の人生から何を学び、何を新たに創出するか。この課題を考え続け、実行することが、稲盛氏に対する弔意の一つではないだろうか。

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