人間の仕事を奪う「変革的AI」のおそるべき実力 プロ並みの写真や絵を生成、文章まで書ける
これについては、3つの課題があると思う。
第1は、規制当局と政治家が最新の状況を把握することだ。GPT-3やダリ2のようなツールを自ら体験したことのある政治家や役人は皆無に近いだろうし、AIの最前線で進む急速な進化を理解している政治家や役人もほとんどいないはずだ。溝を埋めようとする努力も多少は見られるが、もっと多くの政治家や規制担当者がこのテクノロジーに関心を持つ必要がある。
「AIを直視できない」私たちの問題
第2に、巨額の資金を投じてAIを開発している大手テクノロジー企業は、その危険性を耳当たりのいい言葉でごまかすのではなく、自分たちが進めているプロジェクトについてもっとしっかりとした説明を行う必要がある。
現在、大規模なAIモデルの多くは、非公開のデータセットを用い、社内のチームのみでテストされるというように、密室で開発されている。そのため、AIに関する情報が公開されたとしても、世の中を刺激しないよう企業広報戦略として内容が意図的に薄められたり、難解な科学論文の形を取ることで真意が隠されたりするケースが少なくない。
第3に、メディアはAIの進化を専門外の人々にもっとうまく伝える必要がある。残念ながら私もそのひとりだが、ジャーナリストは一般読者にわかりやすく説明しようと古臭いSF的な表現に頼ることが多すぎる。
大規模な言語モデルをSF映画に出てくるスカイネットやHAL9000と比べたり、読者ウケしそうな「ロボットがやってくる!」という恐怖をあおる見出しを付けて、有望な機械学習のブレークスルーに関する記事を台なしにしてしまったりすることもしばしばだ。
もっと言えば、ほとんどの人はAIについて「自分の仕事は奪われるのか」といったように、自分に直接関わる狭い範囲でしか考えをめぐらせていない。AIが全体としてどのように進化し、私たちの未来にとってどのような意味を持つことになるのかを理解しようとはしていないということだ。
私たちは皆、この新たな驚異的なマシーンを受け入れる心の準備を始める必要があるだろう。
(執筆:テクノロジーコラムニスト Kevin Roose)
(C)2022 The New York Times
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