「日本の鰹」を支えるカタクチイワシ漁師の凄さ 戻り鰹の向こう側、知られざる仕事人の歴史

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息の合った従業員たちの動き (著者撮影)

カタクチイワシ漁では、海の上で船から船へと移動したり、生簀のフチを移動して網や生簀内の手入れをしたりする必要があるのだが、一連の仕事を通して従業員たち皆がまるで陸の上で移動するかのように滑らかにスピーディーに動くことに驚いた。連携もスムーズで、熟練の動きの従業員たちの動きがあってこそ、漁が成り立っている。

新造船祝い、地域への還元

㈱かね丸水産は今や地元にとって大きい存在だ。垂水市や地域の公民館等へ寄付をしている。また、いおワールドかごしま水族館へカタクチイワシの供給を行っており(※現在はコロナ禍で停止中)、光を反射してきらめく群れの様子や他の魚との攻防は大きな見どころとなっている。「人に喜んでもらって、自分もまた頑張ろうみたいな気持ちがあるのかも」。

新造船を作るたびに行う進水式は地元の一大イベントだ。餅やお金、交流のある企業からの野菜や果物、焼き芋、カツオ引換券などを大盤振る舞いするため、多くの地元民が楽しみに待っている。餅は妻・美由紀さんが中心になって親族総出で手作りで、前回は10キロ以上もの餅をついた。進水式の日は垂水の港が賑やかに活気づく。来年2023(令和5)年にもまた進水式を控えている。

風にはためく大漁旗が色鮮やかだ(提供:宮下直弥)

㈱かね丸水産は、55年前に兼男さんが自分の船を志したことから始まった。今は、家族や従業員、地元の人たち、そしてカツオ漁船の人たちと、多くの人の生活や仕事を支える屋台骨のような垂水市の一大産業となった。私たちが日々食べているカツオの裏側にあるカタクチイワシの世界、この記事でその奥深さを少しでも感じて頂ければ幸いである。

横田 ちえ ライター

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よこた ちえ / Chie Yokota

鹿児島在住。WEB・雑誌での執筆のほか、企業のオウンドメディア運営やパンフレット製作など幅広く活動。日ごろから九州を中心に全国あちこちを巡り、取材テーマを模索している。最近特に力を入れているテーマは離島や温泉。

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