「日本の鰹」を支えるカタクチイワシ漁師の凄さ 戻り鰹の向こう側、知られざる仕事人の歴史

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深夜のカタクチイワシ漁

カタクチイワシ漁は、本船、灯船、網船、運搬(生簀)船、牽引船と、船が何隻も出港する大所帯で行われる。互いに連携し合ってカタクチイワシの探索から漁、生簀への運搬までの一連の流れで行われる。

人々がそろそろ寝静まる深夜23~24時頃、本船と灯船が先発で出港する。経験に加えて、GPSやレーダー等、最新機材の情報を見てカタクチイワシの群れを探して錦江湾を進む。現在本船に乗船・指揮するのは、2017年に社長に就任した謙太郎さん、前社長であり現会長の兼男さんもまれに乗船するが、普段は本船と連動したタブレット端末を確認・判断して、自宅から指示することが多い。家に居ながらにして現場の指導ができるなんて、水産業界の技術革新の目覚ましさに驚くばかりだ。

タブレット端末。赤色は魚群を示している(著者撮影)

本船は灯船(ひぶね)の役割も果たしており、魚群を見つけたら海中に灯を入れてカタクチイワシを引きつけつつ、網船を呼んで巻き網漁を行う。とれたカタクチイワシは網船から運搬船に移して海上の生簀まで運ばれる。ちょうど一連の仕事を終えた頃、夜が明けて日が昇り始めた。

その後、生簀や網の手入れ、買い付けに来たカツオ漁船へカタクチイワシ販売を行う。取引はすべて海の上でなされる。一般消費者からはうかがい知れない漁業界のBtoBビジネスの世界だ。9~10時頃にすべての仕事を終えて港に戻る。

カツオ漁船にカタクチイワシを販売している様子。バケツでカタクチイワシをすくい、カツオ漁船に渡す(著者撮影)

私たちの食卓に上るカツオや鰹節、背景を辿っていくとカツオ漁だけでなくカタクチイワシ漁もあり、その漁の一連の流れを実際に見られて感慨深い同行取材だった。カツオの刺身1パックも、源流をたどっていくと多くの人や産業が関わり、奥深い世界が広がっている……。海に囲まれた国に暮らし、魚を食べていても、魚や漁業のことは知らないことばかり、ということに改めて気づくことができた。

さて、このように日本のカツオ漁を裏で支えている㈱かね丸水産だが、始まりは現会長の兼男さんひとりからだった。

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