「日本の鰹」を支えるカタクチイワシ漁師の凄さ 戻り鰹の向こう側、知られざる仕事人の歴史

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カツオ漁には、カタクチイワシが不可欠ということをご存じでしたか?
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私たちの食生活に馴染み深い魚・カツオ。2021年度の農林水産省統計によると、カツオは22万4千トンと海面漁業で4位の漁獲量だ。広く食卓に流通している魚であり、カツオから作る鰹節も和食には欠かせない。

そのカツオ漁にはカタクチイワシが不可欠であることを知っているだろうか?

カツオ一本釣りに必須な「イワシ」

カツオ一本釣り漁業には、カツオの群れを漁船の周りに引き寄せるまき餌が必要である。カツオはイワシ類の小魚を好むため、カククチイワシやマイワシ等の生餌をまき餌として使う(近年はマイワシの減少によってカタクチイワシが主流)。生餌なくして漁はできないため、鮮度のいいカタクチイワシの確保はカツオ漁船にとって死活問題である。

鹿児島県垂水市にある㈱かね丸水産は、カツオ漁船向けに生餌用のカタクチイワシの漁獲・販売を続けて55年の会社だ。従業員は三十数名、売上高は年間3億円を誇る。垂水市に面した鹿児島湾(錦江湾)はカタクチイワシの宝庫であり、昭和の初期、垂水市は多くのカツオ漁船が出入りし“日本一のカツオ餌どころ”として活況を呈した。しかし、時代の流れと共に廃業や養殖への転換が相次ぎ、ほとんどの業者がカタクチイワシから離れていった。

㈱かね丸水産がこれだけ長い間カタクチイワシ一本で続けてこられたのはどうしてだろうか? この記事では漁に同行取材しつつ、その理由を掘り下げていきたい。

㈱かね丸水産の会長・池田兼男さん(75)と現社長・池田謙太郎さん(40)(著者撮影)
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