男女でこうも違った「コロナ自宅療養」の収入影響 非正規ほど無給で年収400万未満の4割が収入減

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図3で見たようにケア役割を担った女性の17%はパート・アルバイトの職に就いており、彼女たちの多くはテレワークもできずに休業して、しかも欠勤扱い等で無給だったということだ。

現在について尋ねると、自宅療養者本人は91%がもとの仕事に復帰しているのに対し、そのケアをした人は71%しか復帰していない。

自宅療養に不可欠な役割が直面する理不尽

療養はそれ自体が社会への貢献といえる。感染拡大を防ぎつつ、回復してまた働けるように努力しているのだから。また療養する人は多くの場合、ケアする人を必要とする。素人ながら懸命に家族を看護して医療が回るように貢献しているのはその人たちなのである。

しかし療養者とそのケアをしている人たちが、仕事と収入を失わずに安心してその期間を過ごせるかどうかは、職業によって大きく左右される。非正規など不安定な雇用の人たちは、ここでも安心できる仕組みから排除されていることが浮彫りになった。

この格差の構造はこれまでも存在したが、誰がいつ病気になるかわからないウィズコロナの時代は、この格差をさらに拡大してしまう。

とりわけケアを担う人、特に女性たちは、それに見合う支払いを得られないどころか、しばしば収入を失っているという理不尽に目を向けなければいけない。

有給の病気休暇を雇用形態にかかわらず取得できるようにすることが急務である。特に感染症の場合は、しかも新型コロナの感染症法上の位置づけを2類から5類に引き下げて季節性インフルエンザと同等にするなら、感染者が経済的に心配なく自主的に休業できるようにすることが、職場のクラスター化を防ぐためにぜひとも必要だろう。

また病気休暇と並んで、有給の「ケア休暇」を誰もがとれるようにすべきだ。現在は子どもの看護休暇と介護休暇しかないが、誰を看護しても平等に取得できなければおかしい。主婦専業の人たちも考えると、休業に関係ないケア手当の支給も検討すべきだろう。

療養とケアが日常化しても回る社会にするために、療養とケアの価値を見直して、ケアする人に矛盾をしわ寄せしない仕組みを作らねばならない。

*本調査は京都大学社会科学統合研究教育ユニット異分野融合プロジェクトの助成をいただいて実施したものであり、共同研究者の木下彩栄教授(京都大学大学院医学研究科)の他、塩見美抄准教授(京都大学医学研究科)、村上あかね准教授(桃山学院大学社会学部)、岡本朝也講師(関西学院大学他)、王紫璇さん(京都大学大学院総合生存学館)、谷河杏介さん(京都大学医学研究科)のご協力をいただいた。
落合 恵美子 京都大学大学院文学研究科教授

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おちあい・えみこ / Emiko Ochiai

京都大学 大学院文学研究科 教授。1958年生まれ。80年東京大学文学部卒業。87年、同大大学院社会学研究科博士課程満期退学。2004年から現職。

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