「新横浜線」開業後の姿は?東急電鉄新社長に聞く 東横線に「有料着席」導入へ、運行計画どうなる

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――有料着席サービスの導入はコロナ禍での減収を補う策の1つですか。

検討はコロナ禍以前からなので、減収を補うというよりはお客様に付加価値を提供したい、ニーズに対応したいというのが発端。大井町線のQシートは現状で利用率8割程度と好調で、夕方6~7時台はほぼ100%に近く根強い需要がある。もちろん少しでも売り上げにつながればありがたいが、導入の理由はニーズが強かったからという点が大きい。

「Qシート」の車両
東横線に導入する有料座席サービス「Qシート」の車両(写真:東急電鉄)

――今後、他線にも有料着席サービスを導入する考えはありますか。

できるかどうかは別として、検討はつねにしていったほうがいいとは思っている。技術的には停車時分の確保など実現にハードルがあるので、簡単ではないと思うが。

――東横線はワンマン化も計画しています。進捗と導入の時期は。

設備面、車両面を含めて実現に向けて取り組んでいる最中。時期に関してはまだ申し上げられないが、相互直通している地下鉄副都心線がすでにワンマン運転なので整備しやすい環境であり、目黒線で長い実績があるので経験値もある。安全面については、踏切の障害物検知装置をより高性能な3D化する施策を進めており、すでに全車搭載している防犯カメラについてもよりレベルアップできないか検討している。

――この先、各線で新車両の導入計画はありますか。

スケジュールについて現時点で申し上げられることはないが、大井町線にやや老朽化した車両があるので、その更新検討を進めていくことになるだろう。

田園都市線渋谷駅の混雑緩和策は?

――2018年、髙橋和夫社長(現・東急株式会社社長)へのインタビュー(2018年9月10日付記事「東急社長が語る田園都市線混雑解消の『秘策』」)で、田園都市線渋谷駅の混雑対策として駅の拡張計画があると聞きました。現在でもこの検討は続いているのでしょうか。

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検討していたのは間違いないが、現状では混雑率が大きく低下していることもあり、検討自体は持ちつつも、今後状況を見ながら場合によっては考える、ということになると思う。混雑対策としては、例えばダイナミックプライシングなど新たな考え方も出てきているので、いろいろな視点で考えていきたい。

――2022年は東急グループ創業100周年です。ルーツである「田園都市株式会社」以来の、郊外住宅地を開発して都心に鉄道で通勤するというスタイルがコロナ禍で急速に変化する中、今後のあり方についてどう考えますか。

東急の歴史は都心の住宅環境が厳しい中で郊外に住宅を提供し、そこに鉄道を敷設するというのがスタートで、それが田園都市線などにつながって成長してきた。事業を通じて、それぞれの時代の社会課題を解決してきた会社だと思っている。今はコロナ禍もあって、郊外から都心への輸送一辺倒という時代ではなくなってきている。われわれにとって混雑緩和は長年の課題で、コロナ前から(職住近接などの)「自律分散型都市構造」を打ち出していたが、まさにそれが必要な時代になってきた。これまでとはまた違う、郊外のライフスタイルに資する交通サービスについても考えながらやっていかなければならない。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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