神戸屋「包装パン事業撤退」示すパン業界の大変化 今後パン業界は「質か量か」の二極化が加速か

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同社ホームページの年表を見ると、1928年に従来のホップだねから、当時最先端だったイーストを使う製法に日本で初めて切り替えることに成功、翌年に自動で焼き上げる運行窯を導入するなどの機械化を始め、大手メーカーへの舵を切った。

昭和初期は、パン業界でも機械化が進んだ時期で、敷島製パンも1932年に電気運行窯を採用している。最初に機械化したのは、戦争で廃業することになる大阪のマルキ号製パンだった。ちなみに山崎製パンは1948年創業なので、この時期はまだ存在していなかった。

その後、1939年には大手メーカーで初めて包装パンを発売、ファミレスが続々と誕生した1970年代に、ベーカリーレストラン1号店を西宮に開業するなど、次々と新しい挑戦をしてきた会社であることが読み取れる。

大量生産から顧客規模縮小へ

包装パンは、企業の規模拡大志向を象徴する食品と言える。大量生産を円滑に行い安定した高品質の製品を作るには、さまざまなコストがかかる。食品添加物の使用も、大量生産にはつきものである。

しかし、2000年代に食の不祥事が相次いだこともあって、人々の食の安全性に対する視線はより厳しくなった。パン以外の食品でも、食品添加物の使用を避けるメーカーの傾向は近年強い。

40年来のグルメブームの影響もあり、人々の舌は肥えてきた。特にパンブームの中で、パンに求める水準が高くなった消費者も多いだろう。パンの届け先を広げる大量生産の道を切り捨て、より小規模な顧客層に向けてパンを提供していく道を選んだ神戸屋の選択ははたして吉と出るだろうか。

阿古 真理 作家・生活史研究家

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あこ まり / Mari Aco

1968年兵庫県生まれ。神戸女学院大学文学部卒業。女性の生き方や家族、食、暮らしをテーマに、ルポを執筆。著書に『『平成・令和 食ブーム総ざらい』(集英社インターナショナル)』『日本外食全史』(亜紀書房)『料理に対する「ねばならない」を捨てたら、うつの自分を受け入れられた』(幻冬舎)など。

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