神戸屋「包装パン事業撤退」示すパン業界の大変化 今後パン業界は「質か量か」の二極化が加速か

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ブームが続く間に広がったパンの幅は、人々がパンに求めるものを変えたかもしれない。

一方で、気候変動などが原因で原料費が上がり、さらにウクライナ戦争の影響で輸送費が上昇するなど度重なるコスト増も、単価が安いパンにとって打撃が大きい。コロナ禍も市場環境を変えた。

【2022年8月31日10時50追記】初出時、2021年12月期の売上高に間違いがあったため、下記の通り2021年12月期売上高と、前期比減少幅を修正いたします。

神戸屋を囲む環境も厳しいと見られる。前述の通り、2021年12月期の売上高は390億円と、2020年12月期の433億円から減っている。その3年前、2017年12月期は548億円なので、売り上げは減少傾向にあったと言える。

コロナ禍で売り上げ減に拍車がかかる中、神戸屋は2021年から駅ナカ店舗を中心に矢継ぎ早に閉店。自由が丘や日本橋など都内の店を含めて、これまでに約30店舗のパンや惣菜販売店、レストランを閉店している。神戸屋にとって店舗販売やレストラン事業の立て直しは急務となているが、それには包装パン事業から撤退する必要があったのだろう。山崎パンによると、今回の譲渡を持ちかけたのは神戸屋側だ。

食品添加物を減らす試みを続けていた

今回のニュースに対し、神戸屋のファンの中では、山崎製パンとは品質に対する考え方が相いれないのではないかという声が上がっている。神戸屋のホームページによれば、同社は1980年に「大手製パンメーカーとして初めて」臭素酸カリウムの使用を止めている。臭素酸カリウムはパンだね発酵の際、パンをより大きく膨らませ食感をよくする作用がある。敷島製パンも同年に使用を止めている。

一方、山崎製パンはホームページ上で、「臭素酸カリウムは食品衛生法でパンの製造のみに小麦粉改良剤として使用が認められて」おり、同社の製品には一切残存していないと主張している。

その後、神戸屋は1997年から、イーストフード・乳化剤を加えない製品を開発していく。他社では、敷島製パンが人気シリーズの超熟で2006年にイーストフード、2007年に乳化剤の使用を止めている。包装パンを製造する木村屋総本店では、2017年にイーストフード・乳化剤、マーガリン、ショートニングを使わないクリームパンなどを発売し、話題を呼んだ。

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