――安倍晋三元首相の銃撃事件を受け、統一教会と政治の接点がマスコミで大きくクローズアップされるようになりましたが、ここ30年間はほとんど報じられていませんでした。
1990年代前半までは、合同結婚式や霊感商法の被害がマスコミで大きく報じられ、社会は統一教会の問題に目を向けていました。ところが90年代後半以降、統一教会に関する報道の量は減り、世間の関心も薄れていきました。被害者や家族、被害救済にあたる弁護士らは声を上げ続け、一部のジャーナリストが追及し続けていたにもかかわらずです。
そういったなか、とりわけ2010年代に入り、自民党政治家と統一教会の関わりはさまざまな局面で強まり、目立つようになってきました。これにはまず教団側の思惑がありました。それに政治家・政権側が応じたかたちです。
それまで統一教会と接点を持つことに多少は慎重だった政治家も、次第に抑制しなくなり、イベントに祝電を送ったり、出席して挨拶まですることが積み重ねられていきました。選挙協力もそうです。また、統一教会系の右派学生団体「UNITE」が2016年ににわかに結成され、政権支持や改憲を訴えたのも象徴的でした。これは前年の安保法制反対運動時に注目された若者の団体SEALDsの向こうを張った動きで、政権側には都合がよかったでしょう。
自民党と統一教会のつながりはそれ以前からの持続的なものではありましたが、特に明らかな変化が質・量ともにあったのが、第二次安倍政権を含むこの十数年間だったと総括できます。
――この十数年で歯止めが決壊してしまったと。
そう言えると思います。
山上徹也容疑者に犯行を決意させたのは、2021年9月、統一教会の友好団体・天宙平和連合(UPF)のイベントに安倍元首相がビデオメッセージで登壇したことだったとされます。安倍元首相はそこでみずからの姿を見せ、文鮮明(ムンソンミョン)教祖の妻である韓鶴子(ハンハクチャ)総裁の名前を挙げて「敬意を表します」と肉声で語りました。